【第15回 技術コラム】色域が広ければ、色はきれいに見えるのか?― 色域の広さ・基準色域との重なり・色の正確さから考えるディスプレイ評価 ―

News

【第15回 技術コラム】色域が広ければ、色はきれいに見えるのか?― 色域の広さ・基準色域との重なり・色の正確さから考えるディスプレイ評価 ―

近年、液晶ディスプレイやOLEDディスプレイでは、広色域化が進み、製品仕様にも「DCI-P3 95%」「sRGB 100%」などの数値が多く見られるようになりました。一般的には、色域が広いほど鮮やかで美しい映像を表示できると考えられています。しかし、色域が広いことと、実際に表示される色が正確で自然に見えることは、必ずしも同じではありません。例えば、同じ画像を2台のディスプレイで表示した際、色域が広いディスプレイの方が、肌の色や風景の緑を不自然に鮮やかに表示してしまうことがあります。今回は、ディスプレイの色評価において重要な「色域の広さ」「基準色域との重なり」「色の正確さ」の3つの視点から、色の再現性能について解説します。1. 色域が広いとはどういうことか?色域(Color Gamut)とは、ディスプレイが再現できる色の範囲を示すものです。一般的には、CIE 1931 xy色度図上に赤(R)、緑(G)、青(B)の各原色の色度座標をプロットし、その3点を結んだ三角形によって表現されます。三角形の面積が大きいほど、広い範囲の色度を再現できることを意味します。代表的な色域規格には、次のようなものがあります。sRGB:一般的なPCモニターやWeb画像などで広く使用される標準的な色域DCI-P3:デジタルシネマを中心に規定された広色域規格BT.2020:4K・8K映像などの超高精細テレビ方式で規定された広い色域広色域ディスプレイは、従来のsRGBでは表現できなかった鮮やかな赤や緑などを再現できる可能性があります。ただし、色域が広いというだけでは、個々の色が正しく表示されているかどうかまでは判断できません。2. 色域の広さと基準色域との重なりは異なるディスプレイの色域評価では、色域の面積だけではなく、基準色域との重なりを確認することが重要です。ここで区別したいのが、色域面積比(Gamut Area Ratio)と色域カバー率(Gamut Coverage)です。色域面積比は、ディスプレイの色域面積が基準色域に対してどの程度の大きさであるかを示します。一方、色域カバー率は、基準色域のうち、実際にディスプレイの色域で覆われている割合を示します。例えば、あるディスプレイの色域面積がsRGBの120%であっても、原色の色度座標が基準からずれていれば、sRGBを100%カバーしているとは限りません。つまり、色域面積が大きいことと、必要な色域を正しくカバーできていることは別の評価項目なのです。色域面積比とカバー率の違いを、概念的に示したものが図1です。   https://img.k3r.jp/aphrodi/%E8%89%B2%E5%9F%9F%E5%9B%B3.png 図1 同じ色域面積でもカバー率は異なるA:基準色域と一致する場合(面積比100%、カバー率100%)B:色域面積は同じでも、基準色域から位置がずれている場合(面積比100%、カバー率100%未満)※概念図であり、実際のCIE色度座標や規格値を示すものではありません。なお、ここで説明する面積比やカバー率は、CIE 1931 xy色度図上での2次元評価を前提としています。3. 色が正確に表示されているかを評価するさらに重要なのが、色の正確さ(Color Accuracy)です。例えば、画像データで指定された赤色を表示する場合、ディスプレイの実際の表示色が目標の赤色と一致しているかを評価する必要があります。この評価に用いられる代表的な指標が、色差 ΔE(デルタE)です。色差は、基準色と測定色の違いを数値化したもので、一般的には値が小さいほど基準色に近いことを示します。色差の評価には、CIE 1976のu’v’色空間におけるJNCD(Just Noticeable Color Difference)又はL*a*b*色空間におけるΔE*abやCIEDE2000のΔE00などが使われています。ただし、両者は算出方法が異なるため、数値を比較する際には同じ色差式を使用する必要があります。また、色の正確さはRGB原色の測定だけでは判断できません。実際のディスプレイ評価では、白色、グレースケール、肌色、中間色など、複数の色を測定することが重要です。特に、ホワイトポイント、階調特性(ガンマやEOTF)、表示輝度なども、画像の見え方に大きく影響します。4. 広色域でも色が不自然に見える理由広色域ディスプレイであっても、色管理が適切に行われていない場合には、画像が本来の色より鮮やかに表示されることがあります。例えば、sRGBで制作された画像を、色域変換を適切に行わずに広色域ディスプレイへ表示すると、肌色が赤みを帯びたり、植物の緑が過度に鮮やかに見えたりする場合があります。これは、ディスプレイが広い色域を持つこと自体が問題なのではなく、入力画像の色空間とディスプレイの色再現特性が適切に対応していないことが原因です。したがって、自然で正確な色再現のためには、広い色域だけでなく、色管理やキャリブレーションも重要になります。5. ディスプレイの色評価で重要な3つの視点ディスプレイの色性能を評価する際には、次の項目を組み合わせて確認することを推奨します。 なお、実際の見え方には、周囲の照明環境、表示輝度、コントラスト、視野角なども影響します。色域評価だけでディスプレイ全体の画質を判断するのではなく、使用用途に応じて複数の評価指標を組み合わせることが大切です。6.  色域面積(体積)比とカバー率を効率的に評価するには?色域面積(体積)比やカバー率の評価には、色度測定に加え、基準色域との比較や解析が必要です。さらに、明度による色域の違いまで把握するには、従来のカラーボリューム(色体積)の解析では時間や手間がかかることが課題でした。アフロディの色域評価システムGRシリーズ(GR-55proとGR-300)には、専用の「GamutRing評価ツール」が搭載されており、色域面積(体積)比やカバー率を短時間で簡単に測定・評価できます。GR-55proと300の仕様はこちらをご覧ください。「色域がどれだけ広いか」「基準色域をどこまでカバーしているか」、そして「明るさによって色の再現範囲がどう変わるか」を視覚的かつ定量的に把握でき、製品開発や品質評価における比較・解析作業を効率化します。7. まとめ「色域が広いディスプレイ」と「色を正確に再現できるディスプレイ」は、必ずしも同じではありません。広色域化は、鮮やかな映像表現を可能にする重要な技術です。しかし、ディスプレイの色性能を正しく理解するためには、色域の広さだけでなく、基準色域との重なりや、実際に表示される色の正確さを確認する必要があります。特に、車載ディスプレイ、医療用モニター、業務用ディスプレイなど、用途によって求められる色再現性能は異なります。アフロディでは、ディスプレイの色域・色再現特性をはじめ、各種光学特性の測定・評価について技術的なご相談に対応しています。ディスプレイの色評価に関する課題がございましたら、お気軽にお問い合わせください。次回 第16回 技術コラムのご案内「正面では良好でも、斜めから見にくいのはなぜ?」ディスプレイは、正面から見ると明るく鮮明でも、斜めから見ると画面が暗くなったり、色が変化したり、コントラストが低下したりすることがあります。これは、ディスプレイの表示特性が観察する角度によって変化するためです。次回は、輝度・色度・コントラストの視野角依存性という視点から、ディスプレイの見やすさをどのように評価するのかについて解説します。■ 色域・色の評価に関する無料相談「色域が広いのに、期待した色に見えない」「色域面積とカバー率を、どう使い分ければよいか分からない」「自社の製品に適した色の評価方法を相談したい」このようなお困りごとはありませんか。アフロディでは、ディスプレイの色域や色再現の評価に関する初回のご相談を無料で承っております。評価条件が決まっていない段階でも結構です。本メールへの返信で、お困りの内容を一言お知らせください。ご相談内容に応じて、評価の考え方や確認のポイントをご案内いたします。※サンプル測定や詳細なデータ解析等が必要な場合は、事前に内容と費用をご案内いたします。■ ディスプレイ測定サービスのご案内https://marketing.aphrodi.jp/a/1H32633C/121■ お問い合わせはこちらhttps://marketing.aphrodi.jp/a/1H32633F6/121アフロディ株式会社では、ディスプレイ評価に関する豊富な経験と測定ノウハウを活かし、お客様の開発・品質評価業務をサポートしております。ディスプレイの評価のご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。

【第14回 技術コラム】防眩性を高めると、なぜぎらつくのか?

News

【第14回 技術コラム】防眩性を高めると、なぜぎらつくのか?

ディスプレイの映り込みを抑えるために、AG(Anti-Glare:防眩)処理が広く使われています。しかし、防眩性を高めると、「映り込みは減ったが、画面がぎらついて見える」という別の問題が生じることがあります。今回は、防眩処理によってなぜ“ぎらつき”が発生するのか、その評価方法についてご紹介します。■ 防眩処理は、外光だけでなく表示光にも影響する一般的なAG処理では、ディスプレイ表面に微細な凹凸構造を設け、外光の正反射を拡散させます。これにより、照明や窓などの映り込みを抑えることができます。一方、この微細な表面構造は、外光だけでなくディスプレイ内部から出てくる表示光にも影響します。画素から出た光が表面で局所的に拡散・屈折することで、微小な明暗のばらつきが発生します。この粒状の明暗変化が、人の目には「ぎらぎらする」「ざらざらして見える」という印象として感じられることがあります。この現象が、一般にSparkle(ぎらつき)と呼ばれます。■ 高精細ディスプレイほど影響が目立つ場合があるディスプレイが高精細化すると、画素ピッチは小さくなります。そのため、AG表面の微細構造と画素構造との関係によっては、Sparkleが目立ちやすくなる場合があります。つまり、同じAGフィルムを使用しても、組み合わせるディスプレイによって見え方が変わる可能性があります。このため、防眩材料単体だけでなく、実際のディスプレイと組み合わせた状態で評価することが重要です。■ 防眩性とSparkleはトレードオフになりやすい表面の拡散性を高めれば、映り込みは低減しやすくなります。一方で、拡散を強くしすぎると、・Sparkleの増加・文字の鮮鋭度低下・コントラスト低下・白表示のざらつきなどが生じる場合があります。つまり、防眩性を高めれば高めるほど良い、というわけではありません。重要なのは、「映り込み低減」と「表示品質」のバランスです。■ 目視だけでは管理が難しいSparkleは目視でも確認できます。しかし、「どちらが強いのか」「変更前後でどの程度変わったのか」「どこまでを許容するのか」を目視だけで管理することは容易ではありません。また、観察条件や表示条件によっても印象は変化します。そのため、材料比較や製品開発では、Sparkleを定量化して比較することが重要になります。■ SMS-1000による総合的な表面評価SMS-1000では、ディスプレイとAG表面を組み合わせた状態でSparkleを測定することができます。さらに、Sparkleだけでなく、鮮鋭度(DOI)や防眩性(映り込み)なども含めた評価が可能です。そのため、・AG材料の比較・表面処理条件の比較・設計変更前後の評価・異なるディスプレイとの組み合わせ評価など、ディスプレイ表面品質を総合的に確認したい場合に適しています。■ 持ち運んでSparkleを評価できるSMS-100SSparkle評価を、より機動的に行いたい場合には最近リリースしたSMS-100Sがあります。SMS-100Sの大きな特徴の一つは、持ち運びが可能であることです。据え置き型の測定では、サンプルを測定環境へ持ち込む必要がありますが、SMS-100Sでは測定器を現場へ持ち運ぶことで、・顧客先でのサンプル評価・開発現場での比較測定・大型ディスプレイや移動が難しいサンプルの評価・複数拠点での評価・AGフィルムや表面処理条件のその場での比較など、より柔軟なSparkle評価が可能になります。特に、「目視では違いが分かるが、その場で数値として比較したい」という用途では、持ち運び可能であることが大きなメリットになります。SMS-100Sは、Sparkle評価に特化しながら、必要な場所へ測定器を持っていける機動性を備えた測定システムです。 ■ SMS-1000とSMS-100Sの使い分け測定目的によって、装置の使い分けができます。SMS-1000Sparkleだけでなく、DOIや反射特性なども含め、表面品質を総合的に評価したい場合。SMS-100SSparkle評価を中心に、持ち運んで現場や顧客先でも評価したい場合。つまり、「総合評価のSMS-1000」と「機動性の高いSparkle評価のSMS-100S」という使い分けが一つの考え方になります。■ 防眩性能は「映り込み」だけで評価しないAG処理の評価では、どれだけ反射を抑えたかだけを見るのでは十分ではありません。防眩性能を高めた結果、・Sparkleが増えていないか・文字がぼやけていないか・コントラストが低下していないかまで確認する必要があります。つまり、防眩表面の評価では、「反射特性」と「表示画質」の両方を見ることが重要です。アフロディでは、SMS-1000/SMS-100Sを活用したSparkle評価をはじめ、防眩フィルムや表面処理による表示品質への影響について、測定・評価方法のご相談にも対応しています。「映り込みは改善したが、なぜか画面が見にくくなった」そのような場合は、防眩性だけでなくSparkleという視点から評価することが重要です。次回予告次回は、「色域が広ければ、色はきれいに見えるのか?」をご紹介します。色域が広いことと、実際に色が正確で自然に見えることは必ずしも同じではありません。次回は、色域の広さ・基準色域との重なり・色の正確さという視点から、ディスプレイの色評価について解説します。■ ディスプレイ測定サービスのご案内https://marketing.aphrodi.jp/a/1H30915C/120■ お問い合わせはこちらhttps://marketing.aphrodi.jp/a/1H30915F6/120アフロディ株式会社では、ディスプレイ評価に関する豊富な経験と測定ノウハウを活かし、お客様の開発・品質評価業務をサポートしております。ディスプレイの評価のご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。今後ともよろしくお願い申し上げます。

第13回 技術コラム OLEDとMiniLEDは、何を比べればよいのか?

News

第13回 技術コラム OLEDとMiniLEDは、何を比べればよいのか?

「OLEDとMiniLEDは、どちらがきれいなのか?」「スペック表を見ると、どちらも高画質に見える」「実際には何を比べればよいのか分からない」このような声を聞くことがあります。■ まず、表示原理が違いますOLEDは、画素そのものが発光する自発光方式です。一方、MiniLEDは、液晶パネルの背面に多数の小型LEDを配置し、エリアごとにバックライトを制御する方式です。この違いによって、・黒の表現・ピーク輝度・ハロー・均一性・視野角・応答特性などに、それぞれ異なる特徴が現れます。したがって、「どちらの数字が高いか」ではなく、「どの性能を、どの条件で比べるか」が重要になります。■① 黒はどこまで黒く見えるかOLEDでは、黒を表示する画素を消灯できるため、非常に低い黒輝度を実現しやすい特徴があります。一方、MiniLEDでは、バックライトをエリアごとに制御します。そのため黒表示部分の周囲に明るい表示がある場合、バックライト制御の影響によって、黒部分がわずかに明るく見えることがあります。ここで重要なのは、黒輝度だけを見るのではなく、周囲に明るい表示がある状態で、黒がどのように見えるかという点です。■② コントラストは測定条件で変わるカタログには「高コントラスト」と書かれていても、コントラスト値は測定方法によって変わります。例えば、・全面白と全面黒で測定する・白黒を同一画面に表示する・局所的な白パターンを表示する・実際の映像に近い条件で測定するといった違いによって結果は変わります。特にMiniLEDでは、ローカルディミング制御があるため、表示パターンによって黒輝度やコントラストが変化する可能性があります。したがって、OLEDとMiniLEDを比較する場合には、同じ表示パターン、同じ測定条件で比較することが重要です。■ ③ MiniLEDでは「ハロー」も重要MiniLEDでは、明るい物体の周囲に光がにじんで見えることがあります。これが一般に「ハロー」と呼ばれる現象です。例えば、黒背景に白い文字や明るい物体を表示した場合、・白い部分の周囲が明るく見える・黒背景が浮いて見える・明暗の境界がぼやけるといった現象が発生することがあります。このハローは、・LEDの分割数・ローカルディミングの制御方法・光学設計・表示する画像などによって変わります。そのためMiniLEDでは、単純なピーク輝度だけでなく、暗部と明部が隣接した状態での見え方を評価することが重要です。■④ 輝度は「最大値」だけを見ないMiniLEDは高輝度を実現しやすく、HDR表示では大きなメリットがあります。一方、OLEDも近年は高輝度化が進んでいます。しかし、ここでも単純な最大輝度だけでは十分ではありません。例えば、・小さな白パターンでのピーク輝度・画面全体を白にしたときの輝度・高輝度表示を何秒維持できるか・時間による輝度変化なども重要です。つまり、「何cd/m²出るか」だけでなく、「どの面積で、どのくらいの時間、その輝度を維持できるか」まで確認する必要があります。■ ⑤ 色域が広い=色がきれい、とは限らないOLEDもMiniLEDも、広い色域を実現できる製品が増えています。しかし、色域が広いことと、実際の色が自然できれいに見えることは必ずしも同じではありません。評価では、・色域・色度・白色点・階調特性・低輝度域の色再現・視野角による色変化なども確認する必要があります。つまり、「どれだけ広い色を出せるか」だけでなく、「正確に、安定して色を再現できるか」が重要です。■⑥ 正面だけでなく、斜めからも見るディスプレイは、常に正面から見るとは限りません。特に車載ディスプレイでは、・運転席・助手席・センターディスプレイ・大型横長ディスプレイなど、さまざまな角度から見ることになります。そのため、・輝度の変化・色の変化・コントラストの変化・黒の見え方を角度ごとに評価することも重要です。正面では良好でも、斜めから見ると見え方が大きく変わる場合があります。■⑦ 応答特性も「画質」の一部静止画がきれいでも、動画になると印象が変わることがあります。動きの速い映像では、・応答速度・残像・オーバーシュート・動画ぼやけなども画質に影響します。したがって、動画表示を重視する用途では、静止画の輝度や色だけではなく、時間方向の表示性能も評価する必要があります。■OLEDとMiniLEDは、一つの数字では比較できないOLEDとMiniLEDを比較するときに重要なのは、一つのスペックで優劣を決めないことです。例えば、黒を見るのであれば黒輝度やBlack Mura、HDRを見るのであればピーク輝度や輝度維持、MiniLEDであればハロー、色を見るのであれば色域・色再現、実使用を見るのであれば視野角や応答特性、といったように、目的に応じて見るべき項目が変わります。つまり、「どちらが優れているか」ではなく、「その用途で何を重視するか」を最初に決めることが重要です。■ 総合的に測ることで見えてくる実際のディスプレイ評価では、・輝度・コントラスト・黒輝度・Black Mura・ハロー・色域・視野角・応答特性・鮮鋭度などを組み合わせて評価することで、そのディスプレイの特徴が見えてきます。アフロディでは、単一項目の測定だけでなく、用途や課題に応じた総合的なディスプレイ評価にも対応しています。「OLEDとMiniLEDを比較したいが、何を測ればよいか分からない」そのような場合は、まず、何を“良い画質”と考えるのかを整理し、その目的に合った測定項目を選ぶことが重要です。  次回予告次回は、【第14回 技術コラム】防眩性を高めると、なぜぎらつくのか?をご紹介します。映り込みを抑えるためのAG(Anti-Glare:防眩)処理。しかし、防眩性を高めることで、逆に画面の「ぎらつき(Sparkle)」が目立つことがあります。次回は、防眩処理とSparkleの関係、高精細ディスプレイでぎらつきが目立つ理由、そしてその定量評価方法について解説します。あわせて、Sparkleをはじめとする表面品質を総合的に評価するSMS-1000と、持ち運び可能で現場でもSparkle評価ができるSMS-100Sについてもご紹介します。■ ディスプレイ測定サービスのご案内https://aphrodi.jp/■ お問い合わせはこちらhttps://aphrodi.jp/contact/アフロディ株式会社では、ディスプレイ評価に関する豊富な経験と測定ノウハウを活かし、お客様の開発・品質評価業務をサポートしております。ディスプレイの評価のご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。今後ともよろしくお願い申し上げます。 

第12回 技術コラム 黒画面のムラは、なぜ数値化が難しいのか?

News

第12回 技術コラム 黒画面のムラは、なぜ数値化が難しいのか?

「黒画面にすると、うっすら明るい部分が見える」「目ではムラが分かるのに、測定値では大きな差が出ない」「どこまでを良品とするのか、判断基準が難しい」ディスプレイ評価の中でも、黒画面のムラ評価(Black Mura)は、特に難しいテーマの一つです。今回は、なぜ黒画面のムラは数値化が難しいのか、そしてどのように評価すればよいのかをご紹介します。■ 黒画面では、わずかな差が目立ちやすい明るい画面では、多少の輝度差があっても目立ちにくいことがあります。一方、黒画面では全体の輝度が低いため、わずかな光漏れや輝度差でも、人の目にはムラとして感じられることがあります。特に暗い環境では、・部分的に明るく見える・雲のようなムラが見える・端部だけ明るく見える・局所的な光漏れが気になるといった現象が目立ちやすくなります。つまり黒画面の評価では、絶対的な輝度値が小さい中での微小な差を扱う必要があります。■ 最大値と最小値だけでは不十分ムラ評価というと、「最大輝度と最小輝度を比較すればよいのでは?」と思われることがあります。しかし、実際の見え方はそれほど単純ではありません。例えば、最大値と最小値が同じであっても、・ムラが広い範囲に分布している・小さな明るい部分が局所的に存在する・中心部だけ明るい・端部に沿って明るくなっているなど、ムラの形や位置、広がり方によって見え方は異なります。つまり、黒画面のムラは単純な一点の輝度値ではなく、画面全体の空間的な分布として評価することが重要です。■ 人の目は「差」だけでなく「変化」も見ている人間の視覚は、単純な明るさだけではなく、・周囲とのコントラスト・ムラの大きさ・ムラの形・明るさの変化の仕方・発生位置などにも影響を受けます。そのため、測定値上では小さな差でも、目視では気になるということがあります。反対に、輝度差があっても、その変化が非常になだらかであれば目立ちにくい場合もあります。この「測定値」と「見た目」の関係が、黒画面ムラ評価を難しくしている理由の一つです。■ Black Muraには標準化された評価方法がありますこうした黒ムラを客観的に評価するため、ドイツのDFF(Deutsches Flachdisplay Forum)では、「Uniformity Measurement Standard for Displays (Black Mura)」という測定方法がまとめられています。このDFF方式では、イメージング輝度測定器を使用してディスプレイ全面の輝度分布を測定し、単純な最大輝度・最小輝度だけではなく、画面内で輝度がどのように変化しているかを解析します。Black Muraの検出では、黒画像の輝度勾配(Luminance Gradient)、つまり「場所によって明るさがどの程度変化しているか」に着目します。これによって、「どれだけ明るいか」だけではなく、「周囲に対してどのように明るさが変化しているか」という、実際のムラの見え方に関係する情報を評価することができます。■ なぜ「輝度勾配」を見るのか?例えば、同じ0.1cd/m²の輝度差があったとしても、広い範囲でゆっくり変化している場合と、狭い範囲で急激に変化している場合では、目に感じるムラの印象は異なります。そこでDFFのBlack Mura評価では、画面上の輝度変化を画像処理し、X方向・Y方向の輝度勾配から、局所的な明るさの変化を評価します。さらに、人間の視覚が周囲の明るさに対する相対的な変化を感じるという考え方を踏まえ、輝度勾配を平均輝度で正規化する考え方も採用されています。DFF文書では、夜間は他の反射光が少ないためMuraが特に問題になりやすいことにも触れています。つまりBlack Mura評価では、「黒が何cd/m²か」だけではなく、「その黒が画面内でどのように変化しているか」を見ることが重要なのです。■ 面で測ることが重要このような評価を行うためには、スポット型測定器で数点だけを測定する方法では十分でない場合があります。そこで有効なのが、イメージング測定器による面測定です。画面全体を一度に測定することで、・どこにムラがあるか・どの程度広がっているか・周囲との輝度差がどれくらいあるか・どこで輝度が急激に変化しているかを画像として把握できます。DFF方式でも、輝度カメラによる面測定を前提として、小〜中型の高品質ディスプレイについて、平均輝度、輝度均一性、Black Muraを評価する方法が規定されています。■ 測定条件をそろえることも重要Black Muraは低輝度を扱うため、測定装置だけでなく、測定条件も非常に重要です。例えば、・ディスプレイとカメラの位置合わせ・測定距離・フォーカス条件・露光時間・PWMなど時間的変動の影響・測定器の安定性などです。DFF標準でも、再現性のある測定のため、温度やウォームアップ時間などの安定した測定条件を求めています。つまり、Black Mura評価では、評価アルゴリズムだけでなく、「どのように測るか」まで統一することが重要になります。■ 車載ディスプレイでは特に重要近年、車載ディスプレイは大型化・高精細化が進んでいます。夜間の車内ではディスプレイ周辺が暗くなるため、黒画面のわずかなムラや光漏れが目立ちやすくなります。また、・メーターディスプレイ・センターディスプレイ・助手席ディスプレイ・大型一体型ディスプレイなど、表示面積が大きくなるほど、黒表示時の均一性管理も重要になります。DFFのBlack Mura標準も、Display Measurement Specification(DMS)for Automotive-TFT LCDsに関連する文書として位置付けられています。そのため車載ディスプレイでは、単純な輝度測定だけでなく、Black Muraを含めた面品質の定量管理が重要になります。■ 「目視で気になる」を数値にする黒画面のムラ評価で重要なのは、測定値を出すことそのものではなく、目視で感じる違いを再現性のある数値として表現することです。そのためには、・測定条件を統一する・画面全体を面として測定する・輝度分布だけでなく輝度勾配を評価する・目視評価との相関を確認する・最終的な管理基準を設定するという流れが重要になります。アフロディでは、LMK-6(Technoteam社)などのイメージング測定器を活用し、DFF Black Mura評価を含めた面評価について、測定から解析、評価条件・管理基準の検討までサポートしています。「黒画面のムラが気になるが、どう数値化すればよいか分からない」そのような場合は、単純な最大値・最小値だけではなく、画面全体の輝度分布と“輝度の変化”を測るという視点から評価方法を考えることが重要です。 次回予告次回は、「OLEDとMiniLEDは、何を比べればよいのか?」をご紹介します。黒の表現、輝度、ハロー、色、視野角、応答特性など、表示方式が異なるディスプレイをどのような指標で比較すればよいのか。単純なスペック比較では見えない「実際の画質」の評価ポイントを解説します。■ ディスプレイ測定サービスのご案内https://marketing.aphrodi.jp/a/1H27705C/118■ お問い合わせはこちらhttps://marketing.aphrodi.jp/a/1H27705F6/118アフロディ株式会社では、ディスプレイ評価に関する豊富な経験と測定ノウハウを活かし、お客様の開発・品質評価業務をサポートしております。ディスプレイの評価のご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。今後ともよろしくお願い申し上げます。

技術コラム第11回  高解像度なのに、なぜぼやけて見えるのか?

News

技術コラム第11回  高解像度なのに、なぜぼやけて見えるのか?

「4Kや8Kなど高解像度なのに、細かい文字が少しぼやけて見える」「同じ解像度のディスプレイなのに、製品によって鮮明さが違う」このような経験はないでしょうか。ディスプレイの性能を比較するとき、「4K」「8K」「○○ppi」といった解像度や画素数は、非常に分かりやすい指標です。しかし、解像度の数字が高いことと、実際に鮮明に見えることは、必ずしも同じではありません。今回は、画素数だけでは説明できない「見た目の鮮鋭度」とMTFの関係についてご紹介します。■ 高解像度=鮮明、とは限らないたとえば、同じ4K解像度のディスプレイを2台並べ、同じ細かな文字や画像を表示したとします。一方は輪郭がくっきり見えるのに、もう一方は少しにじんで見える。スペック上の解像度は同じなのに、このような違いが生じることがあります。その理由は、実際の見え方には画素数だけではなく、・画素構造・開口率・光学フィルム・拡散特性・表面処理・信号処理・表示デバイス内部の光学特性など、さまざまな要素が関係しているためです。つまり重要なのは、「何個の画素を持っているか」だけでなく、「細かな情報をどれだけ鮮明に再現できているか」という視点です。 ■ 細かな模様ほど、コントラストは低下するディスプレイに白と黒の縞模様を表示するとします。縞模様が粗い場合には、白と黒の差を比較的はっきり再現できます。ところが、縞模様を細かくしていくと、次第に白と黒の境界がぼやけ、コントラストが低下していきます。実際の文字や画像でも同様です。細かな文字の輪郭や細線、微細な模様などは、ディスプレイの表示特性によって少しずつぼやけていきます。ここで重要になるのが、MTFです。■ MTFとは何かMTFとは、Modulation Transfer Functionの略で、一般に変調伝達関数と呼ばれます。簡単に言えば、細かな模様のコントラストを、どこまで保って再現できるかを表す指標です。細かなパターンになっても高いコントラストを維持できれば、文字や画像はシャープに見えやすくなります。反対に、細かなパターンになるほど急激にコントラストが低下すると、解像度の数字が高くても、実際にはぼやけた印象になることがあります。そのためMTFは、単純な画素数だけでは分からない実際の鮮鋭度を評価するための重要な指標の一つです。■ 「表示できる」と「鮮明に見える」は違うここが、ディスプレイ評価では重要なポイントです。細かなパターンを画面上に表示できているからといって、そのパターンが十分なコントラストで再現されているとは限りません。例えば、文字の線自体は存在していても、・線の輪郭がにじむ・白黒の差が小さくなる・細線同士がつながって見える・背景との差が分かりにくくなるといったことが起こります。つまり、「画素として存在しているか」だけではなく、「人が見たときに、どれだけ明瞭に識別できるか」まで確認することが重要になります。 ■ 同じ解像度でも見え方が違う理由同じ解像度であっても、ディスプレイの構造や表面処理が異なれば、MTF特性も変わります。例えば、防眩処理や拡散フィルムなどは映り込みを低減する一方で、条件によっては細かな文字や画像の鮮鋭度に影響することがあります。また、画素構造や光学設計によっても細部の再現性は変わります。このため、「解像度は同じなのに、なぜこちらの方が鮮明に見えるのか?」という疑問に対して、スペック表だけでは十分な説明ができない場合があります。そこで、実際の表示状態を測定し、MTFとして定量化することが有効になります。■ こんなときにMTF評価が役立ちます例えば、・同じ解像度のディスプレイで鮮明さが違う・光学フィルムを変更したら文字がぼやけた・表面処理を変更したら細線が見えにくくなった・目視では差があるのに、解像度の仕様は同じ・サプライヤー間で表示品質を比較したいといった場合です。このようなケースでは、単純な画素数だけでなく、MTFを測定することで、見た目の違いを数値として比較できる可能性があります。■ 「高解像度」のその先を評価する今後、ディスプレイの高精細化はさらに進んでいきます。しかし、画素数が増えれば、それだけで見やすくなるとは限りません。特に車載ディスプレイ、高精細モニター、AR/VR、医療・産業用途などでは、細かな文字や情報を確実に読み取れることが重要です。そのためには、解像度の数字だけでなく、実際にどこまで細かな情報を鮮明に伝えられているかという視点が必要です。アフロディでは、MTF測定装置による評価だけでなく、測定方法や条件設定、評価結果の解析についてもサポートしています。「高解像度なのに、なぜか鮮明に見えない」そんなときは、画素数だけでなく、MTFという視点から見直してみることが、原因を探る一つの方法になります。 次回予告次回は、「黒画面のムラは、なぜ数値化が難しいのか?」をご紹介します。黒画面では、わずかな輝度差でも人の目にはムラとして感じられることがあります。目視では気になるのに、単純な最大値・最小値だけでは表しにくい「Black Mura」。次回は、黒画面のムラ評価が難しい理由と、面測定による定量評価の考え方について解説します。 ■ ディスプレイ測定サービスのご案内https://marketing.aphrodi.jp/a/1H25899C/117■ お問い合わせはこちらhttps://marketing.aphrodi.jp/a/1H25899F6/117アフロディ株式会社では、ディスプレイ評価に関する豊富な経験と測定ノウハウを活かし、お客様の開発・品質評価業務をサポートしております。ディスプレイの評価のご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。今後ともよろしくお願い申し上げます。

技術コラム 第10回合否基準はどのように決めればよいのか

News

技術コラム 第10回合否基準はどのように決めればよいのか

ディスプレイの測定ができるようになると、次に出てくるのが、「では、どこからOKで、どこからNGにすればよいのか?」という問題です。例えば、「輝度むらは何%までなら合格なのか?」「色差ΔEはいくつ以下なら問題ないのか?」「ぎらつきの値は、どこを基準にすればよいのか?」「MTFは何%以上なら良いディスプレイなのか?」といった質問です。しかし、こうした質問に対して、「この数値以下なら必ず合格です」と一律に答えることは、実際には簡単ではありません。なぜなら合否基準は、測定値だけではなく、製品の用途、顧客要求、目視品質、測定精度、測定ばらつき、製造ばらつきなどを考慮して決める必要があるからです。今回は、ディスプレイ評価における「合否基準」の考え方について整理してみます。 ■「測れること」と「合否を決められること」は違う測定器を使えば、輝度、色度、コントラスト、MTF、ぎらつき、視野角など、さまざまな特性を数値化できます。しかし、数値が出たことと、その数値で合否判定ができることは別の問題です。例えば、あるディスプレイの輝度むらを測定して、「8%」という結果が得られたとします。では、8%なら合格なのか。10%なら不合格なのか。これは、測定器だけでは決められません。その製品が、スマートフォンなのか車載ディスプレイなのか医療用モニターなのかテレビなのか産業用表示器なのかによっても、求められる表示品質は異なります。つまり、測定値は品質を判断するための情報であり、合否基準そのものではありません。 ■ まず「何のための基準か」を明確にする合否基準を決めるときに最初に考えたいのは、その基準を何のために使うのかです。例えば、開発段階で複数の試作品を比較したい量産品の出荷判定をしたい仕入先から納入される部品を受入検査したい顧客との品質保証値を決めたい工程変化を監視したいでは、必要な基準の考え方が異なります。開発段階であれば、絶対的なOK/NGよりも、「従来品より改善しているか」という相対評価が有効なこともあります。一方、量産品の出荷判定では、誰が測定しても同じ判定になる明確な数値基準が必要になります。したがって、評価目的を明確にすることが、合否基準設計の第一歩です。 ■ 目視評価と測定値を結びつけるディスプレイは最終的には「人が見る製品」です。そのため、表示品質に関する合否基準を決める際には、目視で感じる品質と測定値との関係を確認することが非常に重要です。例えば、むら評価であれば、複数のサンプルを用意し、「問題なし」「少し気になる」「明らかにNG」といった目視評価を行います。そのうえで、それぞれのサンプルを測定し、目視評価が変化する境界付近で、測定値がどのようになっているかを確認します。こうすることで、単に測定器の数字から基準を決めるのではなく、実際の見え方に対応した基準を作ることができます。これは、むら、ぎらつき、鮮鋭度、反射など、人の見え方と強く関係する評価では特に重要です。 ■ 「限度見本」を活用する方法もある数値基準だけでは判断しにくい品質については、限度見本(Golden Sample/Limit Sample)を用いる方法もあります。例えば、「このサンプルまでは合格」「これより悪いものは不合格」という境界サンプルを決めます。そのサンプルについて目視評価と機器測定の両方を行い、限度見本の測定値を基準設計の一つの材料にするという考え方です。特に、むら、ぎらつき、表面品質などでは、数値だけでは人が感じる品質を完全に表現できない場合があります。そのため、目視基準+測定値という組み合わせが有効なケースもあります。 ■ 測定ばらつきを無視してはいけない合否基準を設定するときに非常に重要なのが、測定そのものにもばらつきがあるということです。例えば、同じサンプルを繰り返し測定して、9.810.010.2という結果が得られたとします。ここで合否基準を「10.0以下」と決めると、同じ製品なのに、あるときは合格し、あるときは不合格になる可能性があります。このような状態では、安定した品質判定はできません。したがって、基準値を設定する前に、測定の繰り返し性・再現性がどの程度あるのかを確認する必要があります。これは前回まで取り上げてきた、測定器の精度校正器差測定条件とも密接に関係します。 ■ 製品そのものにもばらつきがある測定器だけではなく、製品にも当然ばらつきがあります。例えば同じ型式のディスプレイでも、パネル間の差ロット間の差温度による変化経時変化製造工程の変動などがあります。そのため、基準値を設定するときに、1台の良品だけを測って決めるのは危険です。できれば複数の良品・限界品・不良品を測定し、実際の製造ばらつきがどの程度存在するのかを把握したうえで基準を決める必要があります。■ 基準値ギリギリを量産中心値にしない例えば、顧客要求が「100以上」だったとします。それなら製造目標を、「100が出ればよい」としてよいでしょうか。実際には、測定ばらつきや製造ばらつきがあるため、それでは安定した品質保証が難しくなります。顧客要求値と実際の工程管理値との間には、ある程度の余裕(マージン)を持たせる必要があります。つまり、顧客との合否基準と社内で管理する目標値は、必ずしも同じである必要はありません。顧客要求を確実に満たすために、社内ではより厳しい管理値を設定する考え方があります。 ■ 合否基準の前に、測定方法を固定するここで非常に重要なのが、基準値だけ決めても、測定方法が決まっていなければ意味がないということです。例えば「輝度500 cd/m²以上」という基準があっても、どの位置を測るのかどの測定器を使用するのか測定距離はいくつか表示画像は何か点灯後何分で測るのか周囲環境はどうするかが異なれば、結果も変わります。したがって品質基準を作るときには、「基準値」と「測定方法」をセットで定義することが重要です。これは取引先との測定値の不一致を防ぐ意味でも非常に大切です。 ■ 公的規格や顧客規格がある場合は、まずそこを確認する評価項目によっては、JIS、IEC、ISOなどの規格や、業界規格、顧客独自規格で測定方法や要求事項が定められている場合があります。その場合には、まず、どの規格・仕様書を基準にするのかを明確にします。ただし、公的規格に測定方法が定められていても、自社製品の合否値そのものまで規定されているとは限りません。「どう測るか」と、「どこから合格にするか」は、分けて考える必要があります。 ■ 合否基準は一度決めたら終わりではない製品開発が進むと、ディスプレイの高精細化新しい発光方式新しい表面処理使用環境の変化顧客要求の変化などによって、従来の評価基準では品質を十分に表せなくなる場合があります。例えば、解像度が大幅に向上したディスプレイに対して、従来と同じ評価項目だけで十分なのか。車載ディスプレイで正面特性だけを見ていてよいのか。OLEDの黒品質を従来のLCDと同じ考え方で評価できるのか。こうした変化に応じて、測定項目や合否基準そのものを見直すことも必要です。 ■ 合否基準を作る基本的な流れアフロディでは、合否基準を考える際には、次のような流れで整理することが重要だと考えています。1.何を品質として管理したいのかまず顧客の要求や目視上の問題を明確にします。2.どの物理量で、その品質を評価できるのか輝度、色度、MTF、ぎらつき、反射、むらなど、適切な測定項目を選択します。3.測定方法・条件を固定する装置、位置、距離、角度、表示条件などを明確にします。4.測定のばらつきを把握する繰り返し性、再現性、器差などを確認します。5.良品・限界品・不良品を実際に測定する目視評価と測定値との関係を確認します。6.顧客要求と製造ばらつきを考慮して基準を設定する必要に応じて社内管理値にはマージンを設定します。この流れで考えることで、「何となく決めた数値」ではなく、根拠のある品質基準に近づけることができます。 ■ アフロディから一言「合否基準はいくつにすればよいですか?」私たちも、お客様からこのようなご相談を受けることがあります。しかし、測定器のカタログや一つの測定値だけから、「この数字なら合格」と決めることはできません。重要なのは、何を品質として守りたいのか。人は何を見て良い・悪いと感じているのか。それを、どの物理量で測ればよいのか。そして、その測定をどの程度の精度で行えるのか。を順番に考えることです。つまり、合否基準を決めることは、単なる「数値決め」ではなく、「評価方法を設計すること」だと考えています。アフロディでは、測定器の販売だけではなく、実サンプルを用いた測定、測定方法の検討、目視評価との相関確認などを通じて、お客様の製品に適した評価方法づくりをご提案しています。「測定はできるが、どこを合否基準にすればよいか分からない」「取引先と品質基準を決めたい」そのような課題がありましたら、お気軽にご相談ください。 ■ 次回予告次回は、「高解像度なのに、なぜぼやけて見えるのか?」を取り上げます。解像度の数字が高くても、実際の文字や画像が必ずしも鮮明に見えるとは限りません。画素数だけでは説明できない“見た目の鮮鋭度”とMTFの関係についてご紹介します。■ ディスプレイ測定サービスのご案内https://marketing.aphrodi.jp/a/1H25096C/116■ お問い合わせはこちらhttps://marketing.aphrodi.jp/a/1H25096F6/116アフロディ株式会社では、ディスプレイ評価に関する豊富な経験と測定ノウハウを活かし、お客様の開発・品質評価業務をサポートしております。ディスプレイの評価のご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。

技術コラム 第9回測定器を替えると数値が変わるのは、なぜ?

News

技術コラム 第9回測定器を替えると数値が変わるのは、なぜ?

同じディスプレイを測定しているのに、「測定器Aと測定器Bで値が違う」という経験はないでしょうか。例えば、輝度が少し違う色度がずれる低輝度側で差が大きい特定の色だけ測定値が合わないといったことがあります。このような場合、「どちらかの測定器がおかしい」と考えてしまいがちですが、必ずしもそうとは限りません。測定器にはそれぞれ、測定原理、センサー、光学系、測定視野、分光特性などの違いがあります。つまり、同じ“輝度”や“色度”を測っていても、測定器が違えば完全に同じ結果になるとは限らないということです。今回は、なぜ測定器を替えると数値が変わるのかを考えてみます。 ■ 「同じ測定項目」でも、中身は同じとは限らない例えば、2台の測定器がどちらも「輝度」を測定できるとします。一見すると、同じ物理量を測っているので、同じ値が出るように思えます。しかし、測定器内部では、どのようなセンサーを使っているかどの波長域をどのように捉えているかどの範囲の光を取り込んでいるかどの程度の面積を平均しているかが異なります。そのため、測定項目の名前は同じでも、測定器が“見ている光”は完全には同じではないことがあります。 ■ センサー方式の違いディスプレイ測定器には、さまざまな受光方式があります。例えば、フィルター方式分光方式カメラ方式などです。フィルター方式では、光を複数のセンサーで受け、それぞれの感度特性から輝度や色度を求めます。一方、分光方式では、入射した光を波長ごとに分け、スペクトルを測定したうえで輝度・色度を算出します。どちらの方式にも特徴があります。そのため、測定対象の発光スペクトルによって、測定器間の差が現れやすくなる場合があります。特に近年は、OLEDMiniLED量子ドット広色域LEDなど、従来とは異なるスペクトルを持つディスプレイが増えています。こうした表示デバイスでは、測定器の分光特性や受光方式の違いが結果に影響することがあります。 ■ 分光特性が違えば、色度も変わることがある人の目は、波長によって感度が異なります。測定器も、人の視覚特性を模擬したり、分光データから計算したりして、輝度・色度を求めています。しかし、実際の測定器では、理想的な視感度特性と完全に一致するわけではありません。そのため、スペクトル形状が鋭い光源や、特定波長に強いピークを持つディスプレイでは、測定器ごとの差が大きくなる場合があります。つまり、白色LEDではほぼ同じ値でも、OLEDや広色域ディスプレイでは差が大きくなるということもあり得ます。 ■ 測定視野が違えば、平均される範囲も変わる測定器によって、どの程度の範囲を測っているかも異なります。例えば、小さなスポットを測る測定器比較的広い範囲を平均して測る測定器カメラで面全体を二次元測定する装置があります。ディスプレイは完全に均一ではないため、測定範囲が違えば測定値も変化します。例えば、中央部にわずかな輝度むらがある場合、小さなスポット測定ではその差を強く捉えますが、広い範囲で平均すると差が小さく見えることがあります。したがって、測定器を比較するときには、何mm、何度、どの範囲を測っているのかを見ることが重要です。 ■ 光学系やフォーカスの違いも影響する測定器には、レンズやアパーチャなど、それぞれ固有の光学系があります。そのため、測定距離フォーカス開口迷光視野角などの違いも測定値に影響します。特に高解像度ディスプレイや微細なパターンを測定する場合には、光学系がどこまで細かな構造を捉えられるかが重要になります。測定器の分解能が十分でなければ、細かな明暗差が平均化される場合もあります。 ■ 低輝度では測定器の特徴が出やすい黒表示や低輝度階調の測定では、測定器による違いがより目立つことがあります。低輝度では、センサーのノイズ暗電流測定時間ダイナミックレンジ迷光などの影響が相対的に大きくなるためです。例えば、高輝度ではほぼ同じ値だった2台の測定器が、黒輝度や低階調になると大きく異なるということがあります。したがって、測定器を選定するときには、最高輝度だけではなく、自分が評価したい輝度領域で十分な性能があるかを見る必要があります。 ■ 測定器のスペックだけで選べばよいのか?ここで大切なのは、「高精度な測定器=すべての用途に最適」とは限らないことです。例えば、高速に多数点を測定したい非常に低い黒輝度を測定したい面内むらを二次元で見たいスペクトルを詳細に確認したい車載ディスプレイを角度別に測定したい生産ラインで短時間に検査したいなど、目的によって必要な性能は異なります。つまり、測定器を選ぶときには、「どの測定器が一番高性能か」ではなく、「何を測りたいのか、その目的に最も適しているのはどの測定器か」を考えることが重要です。 ■ 測定器を変更するときは「相関確認」が重要既存の測定器から新しい測定器へ変更する場合には、いきなり新しい測定値へ切り替えるのではなく、旧測定器と新測定器の相関を確認することをお勧めします。例えば、同じディスプレイを用意する同じ表示条件で測定する複数の輝度・色条件を設定する旧測定器と新測定器でそれぞれ測定する差と傾向を確認するといった方法です。このとき、一つの白表示だけではなく、高輝度中間輝度低輝度RGB各色黒表示など、複数条件で確認することが重要です。そうすることで、「常に一定の差があるのか」それとも、「特定の輝度・色・スペクトルで差が大きくなるのか」を把握できます。■ 「どちらが正しいか」より、「なぜ違うか」測定器AとBの結果が違ったとき、「どちらが正しい測定器なのか?」という議論になりがちです。もちろん、校正状態や測定精度を確認することは重要です。しかし、それだけではなく、測定原理や測定条件の違いによって、どのような差が生じているのかを理解することが大切です。測定器による差を把握できていれば、社内基準の継続性取引先とのデータ比較新旧測定器の置き換え製品間の評価品質判定にも対応しやすくなります。 ■ 測定器選定で確認したいこと新しい測定器を選ぶ場合には、カタログスペックだけでなく、少なくとも次の点を確認したいところです。① 何を測りたいのか輝度・色度なのか、低輝度なのか、面内むらなのか、視野角なのか。② どのようなディスプレイを測るのかLCD、OLED、MiniLED、広色域ディスプレイなど、対象によって必要な性能は変わります。③ 必要な測定精度と再現性はどの程度か研究開発なのか、品質管理なのか、生産検査なのかによっても異なります。④ 現在使用している測定器との相関はどうか既存データとの継続性が必要な場合には特に重要です。⑤ 実際のサンプルで評価したかカタログスペックだけでは分からない差があります。可能であれば、実際のディスプレイを使った比較測定が有効です。 ■ アフロディから一言測定器を替えると数値が変わる。これは、必ずしも異常なことではありません。測定器には、測定原理、センサー、分光特性、光学系、測定視野、低輝度性能など、それぞれ特徴があります。重要なのは、「測定器の数字だけを比較する」のではなく、「なぜその差が出るのか」を理解することです。そして測定器を選ぶときには、一番高性能な測定器を選ぶのではなく、評価したい対象・目的に適した測定器を選ぶことが大切です。アフロディでは、さまざまなディスプレイ測定器を扱ってきた経験をもとに、「何を測りたいのか」から測定方法・測定器を考えることを大切にしています。「現在の測定器で十分なのか?」「新しい測定器へ変更した場合、過去のデータとの相関はどうなるのか?」「自社のディスプレイにはどの方式の測定器が適しているのか?」そのような疑問がありましたら、実サンプルを使った比較評価も含めてご相談ください。■ 次回予告次回は、「合否基準はどのように決めればよいのか?」を取り上げます。測定はできても、「では、この数値をどこからOK・NGにするのか?」で悩むケースは少なくありません。目視評価、測定ばらつき、製品要求、顧客要求などを踏まえた、評価基準の考え方をご紹介します。 ■ ディスプレイ測定サービスのご案内https://marketing.aphrodi.jp/a/1H24210C/115■ お問い合わせはこちらhttps://marketing.aphrodi.jp/a/1H24210F6/115アフロディ株式会社では、ディスプレイ評価に関する豊富な経験と測定ノウハウを活かし、お客様の開発・品質評価業務をサポートしております。ディスプレイの評価のご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。今後ともよろしくお願い申し上げます。

【技術コラム 第8回】社内と取引先で測定値が違うのは、なぜ?

News

【技術コラム 第8回】社内と取引先で測定値が違うのは、なぜ?

同じディスプレイを測定しているはずなのに、「自社で測った値と、取引先で測った値が合わない」という経験はないでしょうか。例えば、輝度が数%違う色度がわずかにずれるコントラスト値が一致しない反射率や視野角特性の結果が異なるといったことです。このような場合、どちらかの測定器が間違っているとは限りません。実際には、校正状態、測定器そのものの器差、測定条件、測定方法など、複数の要因が重なって測定値の違いが生じていることがあります。今回は、社内と取引先で測定値が一致しないときに、どこを確認すればよいのかを考えてみます。■ まず確認したいのは「校正」測定器は、使用しているうちに少しずつ特性が変化する可能性があります。そのため、測定値の信頼性を維持するためには、定期的な校正が重要です。例えば2社が同じディスプレイを測定していたとしても、一方は最近校正した測定器もう一方は長期間校正していない測定器という状態であれば、測定結果に差が生じる可能性があります。また、校正済みだから必ず同じ値になるというわけでもありません。どの標準に対して校正されているのか、校正方法や校正時期はどうか、といった点も確認する必要があります。測定値が合わないときは、まず、両方の測定器が適切な校正状態にあるかを確認することが基本です。■ 測定器には「器差」がある同じ種類の測定器であっても、まったく同じ値が出るとは限りません。また、異なるメーカーや異なる方式の測定器を使用している場合には、その差がさらに大きくなる可能性があります。例えば、センサー方式分光方式光学系測定視野角分光帯域波長分解能受光感度などが異なれば、同じ対象を測っても結果が完全には一致しないことがあります。このような測定器固有の違いを、一般に器差と呼びます。特に近年のディスプレイでは、OLED、量子ドット、MiniLEDなど、従来とは異なる発光スペクトルを持つ製品が増えています。そのため、測定器の方式や分光特性の違いが、測定結果へ影響する可能性があります。重要なのは、「どちらの測定器が正しいか」だけではなく、両方の測定器の差を把握することです。■ 測定条件が少し違うだけでも結果は変わる測定器が正常で、校正状態にも問題がない。それでも測定値が合わない場合には、測定条件を確認する必要があります。例えば、測定距離測定角度測定位置測定径測定時間フォーカスディスプレイの表示画像表示輝度パネル設定周囲照明暗室条件ウォームアップ時間などです。ディスプレイは面内で完全に均一ではありません。そのため、測定位置が数cm違うだけでも、輝度や色度に差が出ることがあります。また、ディスプレイの温度や点灯時間によって測定値が変化する場合もあります。つまり、同じサンプルを測っているだけでは不十分で、同じ条件で測っているかを確認する必要があります。■ 「同じ項目を測っているつもり」でも、測定方法が違うことがあるもう一つ重要なのが、測定方法です。例えば両社とも「輝度」を測定している場合でも、一方は狭い測定径で画面中央を測定し、もう一方は広い測定範囲で平均値を求めている、ということがあります。この場合、測定項目の名前は同じ「輝度」でも、実際に測っている範囲は異なります。反射測定、視野角測定、むら測定、ぎらつき測定などでは、測定ジオメトリや解析方法によって結果が変わることもあります。したがって、「何を測ったか」だけではなく、「どのような方法で測ったか」まで確認することが重要です。■ 測定値が合わないとき、すぐに補正してよいのか?社内と取引先の測定値が異なると、では、差分を補正値として入れればよいのでは?」と考えることがあります。しかし、単純な補正には注意が必要です。例えばある1台のサンプルで、自社:500 cd/m²取引先:510 cd/m²だったとしても、すべてのサンプルで常に10 cd/m²の差が出るとは限りません。輝度レベル、色、スペクトル、測定対象によって器差が変化する場合があります。そのため、補正を行う場合には、複数のサンプルや測定点を用いて傾向を確認することが重要です。■ 比較測定が非常に有効測定値の差を確認する方法として有効なのが、同じサンプルを複数の測定器で測定する比較測定です。例えば、同じディスプレイを用意する表示条件を統一する測定位置、距離、角度を揃えるそれぞれの測定器で測定する測定値の差と傾向を比較するという方法です。これにより、校正の問題なのか、器差なのか、測定条件なのかを切り分けやすくなります。また、一度だけではなく複数回測定することで、測定器自身の再現性も確認できます。■ 「測定値が違う」こと自体が問題なのではない実務では、すべての測定器の値を完全に一致させることが必ずしも目的ではありません。重要なのは、なぜ違うのかを理解し、その差を管理できていることです。例えば、「自社装置と取引先装置では平均して約2%の差がある」「特定の色域では差が大きくなる」「この測定条件では再現性が±1%以内である」といったことが分かっていれば、測定値を適切に解釈できます。逆に、差の理由が分からないまま、「こちらの数字が正しい」「そちらの測定がおかしい」と議論しても、問題の解決にはつながりません。■ 測定値を合わせるために必要な4つの確認社内と取引先で測定値が違う場合には、次の順番で確認すると整理しやすくなります。1.校正状態は適切か校正時期、校正方法、トレーサビリティを確認します。2.測定器の器差は把握されているか同一サンプルによる比較測定を行います。3.測定条件は同じか位置、距離、角度、表示条件、環境条件を揃えます。4.測定方法・解析方法は同じか測定径、測定ジオメトリ、解析条件などを確認します。この4つを順番に確認することで、多くの場合、測定値が異なる原因を絞り込むことができます。■ アフロディから一言社内と取引先で測定値が違ったとき、「どちらの測定器が正しいのか?」だけを考えてしまいがちです。しかし重要なのは、「なぜ差が出ているのか?」を切り分けることです。測定値の違いには、校正、器差、測定条件、測定方法など、複数の要因が関係しています。そして、測定値を完全に一致させることよりも、差の原因と大きさを把握し、管理できる状態にすることが実際の品質管理では重要です。アフロディでは、各種ディスプレイ測定器の校正・メンテナンスだけでなく、測定器間の比較、測定方法の検討、測定条件の最適化などについてもご相談いただけます。「自社と取引先で測定値が合わない」「どちらの測定値を基準にすればよいか分からない」そのような場合には、測定器だけを見るのではなく、測定プロセス全体から原因を整理することが重要です。■ 次回予告次回は、「測定器を替えると数値が変わるのは、なぜ?」を取り上げます。測定原理、センサー、分光方式、測定視野など、測定器そのものの違いが結果にどのような影響を与えるのかを考えていきます。■ ディスプレイ測定サービスのご案内https://marketing.aphrodi.jp/a/1H22556C/114■ お問い合わせはこちらhttps://marketing.aphrodi.jp/a/1H22556F6/114アフロディ株式会社では、ディスプレイ評価に関する豊富な経験と測定ノウハウを活かし、お客様の開発・品質評価業務をサポートしております。ディスプレイの評価のご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。今後ともよろしくお願い申し上げます。

技術コラム 第7回目視では違うのに、なぜ測定値は同じなのか?

News

技術コラム 第7回目視では違うのに、なぜ測定値は同じなのか?

2台のディスプレイを比較したとき、「目で見ると、明らかに違って見える」ところが測定してみると、「輝度も色度も、ほとんど同じ」このような経験はないでしょうか。反対に、測定値には差があるのに、実際に見比べてみると違いがよく分からないこともあります。このような場合、まず確認すべきなのは、測定方法や測定精度に問題がないかという点です。測定条件、校正状態、測定位置、測定径、距離、角度、再現性などが適切でなければ、本来ある差を正しく捉えられない可能性があります。ただし、それだけですべてを説明できるわけではありません。測定方法や精度を十分に管理しているにもかかわらず目視差が残る場合、「測定器が測っているもの」と「人が見て判断しているもの」が一致していない可能性があります。今回は、この二つの観点から考えてみます。■ まず確認したいのは、測定方法と測定精度「目では違うのに測定値が同じ」という場合、最初から「人の目と測定器は違う」と結論づけるのは適切ではありません。まず、本当に正しく測れているのかを確認する必要があります。例えば、測定器は適切に校正されているか測定位置は同じか測定距離・角度は一定か測定径は適切かフォーカス条件は適切か測定器の分解能は十分か繰り返し測定した際の再現性はあるか異なる測定器を使用している場合、器差は把握されているかといった点です。特にディスプレイでは、わずかな測定位置の違いや測定範囲の違いによって、結果が変化することがあります。また、小さな局所差を見ようとしているのに測定径が大きければ、その差が平均化されてしまう場合もあります。したがって、目視差を議論する前に、その差を捉えられる測定方法・測定精度になっているかを確認することが非常に重要です。■ しかし、測定方法と精度だけが原因ではない一方で、校正も問題ない。測定条件も統一されている。再現性も十分にある。それでも、「目で見ると違うのに、測定値はほぼ同じ」ということがあります。ここで重要になるのが、「現在測っている物理量が、本当に目視差に対応しているのか?」という考え方です。例えば、輝度と色度だけを測定していたとしても、人が感じている違いが鮮鋭度やむら、ぎらつき、反射であれば、輝度・色度の測定値には大きな差が現れない可能性があります。つまり、測定精度が高くても、測る項目が適切でなければ、目視差を説明できないということです。■ 測定器は「決められた範囲」を測っている測定器は、決められた位置、角度、距離、測定範囲における特定の物理量を測定します。例えば、ディスプレイ中央部の輝度を測定した場合、得られるのは、その測定範囲における明るさの値です。一方、人がディスプレイを見るときは、画面中央の一点だけを見ているわけではありません。人は、画面全体の明るさ黒の沈み方色のバランス輪郭むら反射ぎらつき表面の質感など、複数の情報を同時に見ています。そのため、中央部の輝度や色度がほぼ同じでも、画面全体としての見え方が異なることがあります。■ 平均値では、局所的な差が消えることもあるディスプレイには、細かな輝度むら色むらぎらつき輪郭のにじみ局所的な明暗差などが生じることがあります。測定範囲が広い場合、このような局所的な変化が平均化され、数値上では差が小さくなることがあります。しかし、人の目は、むらの境界、規則的な模様、局所的に明るい部分、細かなぎらつき、文字や線の輪郭などを敏感に捉えることがあります。そのため、測定値が同じでも、一方だけが「むらっぽい」「ぼやけている」「ぎらついている」と感じられる場合があります。ここでも重要なのは、測定値そのものだけでなく、測定範囲や空間分解能が目的に合っているかを見ることです。■ 「測定値が同じ」は、「表示品質が同じ」ではない例えば2台のディスプレイを比較して、輝度と色度がほぼ同じだったとします。それでも見え方が違う場合には、別の特性が影響している可能性があります。例えば、黒輝度とコントラスト輝度・色度の均一性低輝度階調鮮鋭度・MTF表面反射ぎらつき視野角特性時間的な輝度変動などです。つまり、「測定値が同じ」ということは、今回測定した項目では差が小さかったということであり、表示品質全体が同じという意味ではありません。■ 「測れる精度」と「何を測るか」は両方重要ディスプレイ評価では、測定方法・測定精度と測定項目の選択の両方が重要です。どちらか一方だけでは、十分ではありません。例えば非常に高精度な輝度計を使用したとしても、目視差の原因が鮮鋭度であれば、輝度測定だけでは説明できません。逆に、評価項目としてMTFが適切であっても、測定条件やフォーカス、解析条件が不適切であれば、信頼できる結果にはなりません。したがって、「正しく測ること」と「正しいものを測ること」この両方が必要になります。 ■ 測定環境と目視環境にも注意する測定は暗室で行い、目視評価は明るい室内で行っている場合、結果が一致しにくくなることがあります。周囲の照明が画面に反射すると、黒が白っぽく見えるコントラストが低下する色の印象が変化するといったことが起こります。さらに、観察距離や角度が変われば、色、明るさ、鮮鋭感の印象も変化します。そのため、目視結果と測定結果を比較するときには、周囲の明るさ、照明位置、観察距離、観察角度、表示画像、パネル設定などを、できるだけ揃えることが大切です。■ では、どのような順番で考えればよいのか?「目では違うのに、測定値が同じ」という場合には、次の順番で確認すると分かりやすくなります。1.測定方法・測定精度は適切か校正、測定条件、再現性、測定径、分解能、器差などを確認します。2.目視では、具体的に何が違って見えるのか明るさなのか、色なのか、むらなのか、ぼやけなのか、ぎらつきなのかを検討します。3.現在の測定項目は、その違いを捉えているか輝度・色度だけで十分なのか、別の評価項目が必要なのかを考えます。4.目視と測定の条件は一致しているか環境、角度、距離、表示条件などを確認します。この順番で考えると「測定精度の問題なのか」「測定方法の問題なのか」「そもそも測る項目が違うのか」を切り分けやすくなります。 ■ 目視評価と機器測定は、どちらも必要目視評価と機器測定は、どちらか一方が正しいというものではありません。目視評価は、人が実際に感じる違和感や品質差を見つけるために有効です。一方、機器測定は、その違いを客観的な数値として記録し、製品間、ロット間、拠点間で比較するために必要です。重要なのは、目視で違いを見つけ、適切な方法・精度で、その違いに対応する物理量を測定することです。■ アフロディから一言「目視では違うのに、測定値が同じ」このような場合、まずは測定方法や測定精度が適切かを確認することが非常に重要です。ただし、それだけで原因が説明できるとは限りません。測定方法や精度に問題がなくても、「現在測定している項目が、人が感じている違いを捉えていない」ことがあります。ディスプレイ評価では、正しく測ること。そして、正しいものを測ること。この二つが重要です。アフロディでは、輝度・色度、コントラスト、視野角、反射、鮮鋭度・MTF、ぎらつき、色域、二次元分布などを組み合わせ、「目では違いが分かるのに、今の測定では説明できない」という課題に対して、測定方法そのものから一緒に考えるご提案を行っています。  ■ 次回予告次回は、「社内と取引先で測定値が違うのは、なぜ?」を取り上げます。同じディスプレイを測定しているのに、会社や拠点、測定器が変わると結果が合わない。その原因となる校正、器差、測定条件、測定方法の違いについて考えていきます。■ ディスプレイ測定サービスのご案内https://marketing.aphrodi.jp/a/1H20842C/113■ お問い合わせはこちらhttps://marketing.aphrodi.jp/a/1H20842F6/113アフロディ株式会社では、ディスプレイ評価に関する豊富な経験と測定ノウハウを活かし、お客様の開発・品質評価業務をサポートしております。ディスプレイの評価のご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。今後ともよろしくお願い申し上げます。

技術コラム 第5回/ぎらつき編②】映り込みを減らすと、なぜ画面がざらつくことがあるのか?

News

技術コラム 第5回/ぎらつき編②】映り込みを減らすと、なぜ画面がざらつくことがあるのか?

平素より大変お世話になっております。アフロディ株式会社です。ディスプレイでは、照明や周囲の景色の映り込みを抑えるために、アンチグレア(AG)処理が広く使われています。AG処理では、表面に微細な凹凸や散乱構造を形成し、入射した外光の反射光を広い角度へ拡散させます。これにより、鏡のような明瞭な映り込みは低減します。しかし、この光の拡散性を強くすることが、別の表示品質問題を生む場合があります。その一つが、ぎらつき(Sparkle)です。AGの拡散性とぎらつきの関係AG表面では、外光だけでなく、ディスプレイの画素から出た表示光も微細な表面構造を通過します。AGの拡散性が強くなると、表面の微細構造による光学的な光干渉(変調)も大きくなり、画素から出た光が局所的に強く見えたり、弱く見えたりする場合があります。その結果、均一な白やグレーを表示しているにもかかわらず、画面上にランダムな明暗差が発生し、粒状のざらつきとして認識されます。 概念的には、AGの拡散性を高める↓反射光が広く拡散する↓映り込みが低減する一方で、AGの拡散性を高める↓表示光への局所的な変調も大きくなる↓画素近傍の輝度ばらつきが増える↓ぎらつきが目立つ可能性が高まるという関係があります。したがって、映り込み低減とぎらつき低減は、必ずしも同じ方向の性能ではありません。「防眩性が高い=表示品質が良い」ではないAGの拡散性を強くすると、防眩性は向上する方向に働きます。しかし、その一方で、ぎらつきの増加白ぼけ鮮鋭度(MTF)の低下透明感の低下が生じる可能性があります。特に高精細ディスプレイでは、画素サイズが小さくなるため、画素構造とAG表面の微細構造との関係が変化します。そのため、従来のパネルで良好だったAG部材が、高精細(ppi)パネルでも最適とは限りません。評価すべきは「AGの強さ」ではなくバランスAG部材を評価する場合、Hazeや反射特性だけを見て判断するのでは十分とは限りません。重要なのは、映り込みの低減(防眩性評価)+ぎらつき(Sparkle評価)+鮮鋭度(MTF評価)を、実際のディスプレイと組み合わせた状態で評価することです。例えば、映り込みは非常に少ないが、白/単色画面ではぎらつきが目立つというAGと、映り込みを適度に抑えながら、ぎらつきが少なく鮮明に見えるAGでは、後者の方が最終製品として適切な場合があります。つまり、目指すべきなのは「最も拡散性の強いAG」ではなく、「用途に対して最適なAG」です。パネル、AG表面構造、観察条件を組み合わせて、防眩性・ぎらつき・鮮鋭度(MTF)の最適点を探すことが重要になります。 編集後記・ご案内次回予告技術コラム 第6回/ぎらつき編③】「なんとなく画面が汚い」を、どう数値で評価するのか?次回は、人が感じる粒状感をどのように定量化し,Sparkle Contrastとして開発・品質管理に活用するのかをご紹介します。次回シリーズも、ぜひご覧ください。■ ディスプレイ測定サービスのご案内https://marketing.aphrodi.jp/a/1H16883C/112■ お問い合わせはこちらhttps://marketing.aphrodi.jp/a/1H16883F6/112アフロディ株式会社では、ディスプレイ評価に関する豊富な経験と測定ノウハウを活かし、お客様の開発・品質評価業務をサポートしております。ディスプレイぎらつき/映り込み評価をご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。今後ともよろしくお願い申し上げます。