技術コラム 第6回/ぎらつき編③ディスプレイの「ぎらつき」をどう測るか― 標準化されたSparkle評価とSMS-1000 ―
平素より大変お世話になっております。
アフロディ株式会社です。
ディスプレイの表面にアンチグレア(AG)処理を施すと、外光の映り込みを低減できる一方で、表示面に細かな「キラキラ」「ザラザラ」とした見え方が生じることがあります。
これが一般にSparkle(ぎらつき)と呼ばれる現象です。
前回までのコラムでは、ぎらつきがAG表面の微細構造とディスプレイの画素構造との相互作用によって発生することをご紹介しました。
では、この人が感じる「ぎらつき」を、どのように客観的な数値として評価するのでしょうか。
実は現在、ぎらつきの測定・評価方法は、単なる装置メーカー独自の方法ではなく、JISおよびIECの規格において標準化された評価手法が定められています。
今回は、この標準化されたSparkle評価の考え方と、アフロディが取り扱うSMS-1000による評価についてご紹介します。
■ そもそも「ぎらつき」は何を測っているのか
Sparkleは、AG表面の微細構造によってディスプレイから出射する光が局所的に変化し、画面上に細かな明暗のばらつきとして現れる現象です。
人の目には、
キラキラして見える
ザラザラして見える
粒状感がある
均一な画面なのに細かな明暗差を感じる
といった見え方として認識されます。
ここで重要なのは、Sparkleは単純なAG表面の「粗さ」を測定しているわけではないということです。
AG表面と、その下にあるディスプレイの画素構造との光学的な相互作用によって発生する表示上の輝度変動を評価します。
したがって、表面粗さやヘイズだけを測定しても、実際に人がディスプレイを見た際に感じるSparkleを十分に説明できない場合があります。
■ ぎらつき評価はすでに標準化されている
Sparkleは以前、目視による官能評価や各社独自の測定方法によって比較されるケースも多くありました。
しかし現在では、ディスプレイ表面におけるぎらつきを客観的に比較するため、JISおよびIECにおいて測定・評価方法が標準化されています。
標準化された評価では、一定の測定条件のもとでディスプレイ表示面を撮像し、画像中に発生する局所的な輝度変動を解析します。
つまり、
「人がぎらついて見える」
という感覚的な現象を、
画像計測による客観的な数値へ変換する
ことが、Sparkle測定の基本的な考え方です。
規格に基づく共通の評価方法を用いることで、異なるAG材料やディスプレイについても、一定の基準で比較することが可能になります。
これは、ディスプレイメーカー、AGフィルムメーカー、カバーガラスメーカーなどが評価結果を共有するうえでも非常に重要です。
■ Sparkle測定では局所的な輝度変動を評価する
実際の測定では、ディスプレイに均一な画像を表示させ、その表示面をカメラで撮像します。
均一な画像を表示しているにもかかわらず、AG表面と画素構造との相互作用によって、撮像画像には細かな明暗の変動が現れます。
この画像を解析して、
平均的な表示輝度に対して、どの程度局所的な輝度変動が発生しているか
を定量化します。
基本的には、
Sparkle値が大きいほど、ぎらつきが強い
と評価します。
目視では、
「サンプルAよりもサンプルBの方が少しザラザラして見える」
という主観的な評価になりますが、測定することで、その違いを客観的な数値として比較できるようになります。
■ なぜ「標準化された測定条件」が重要なのか
Sparkle値は、AG材料だけによって決まるわけではありません。
例えば、
ディスプレイの画素密度
画素サイズ
表示色
表示輝度
AG表面構造
カメラ・光学系
測定距離
フォーカス条件
などによっても測定結果は変化します。
そのため、測定条件が異なる状態で得られた数値を単純に比較することは適切ではありません。
ここに、JISやIECなどで測定方法や条件を標準化する大きな意味があります。
共通の考え方、共通の測定条件に基づいて評価することで、材料間、製品間、さらには企業間でも比較可能なデータへ近づけることができます。
■ SMS-1000は標準化されたSparkle評価手法に準拠
アフロディが取り扱うSMS-1000は、このJISおよびIECで定められたSparkle評価手法に準拠した測定が可能なシステムです。
したがってSMS-1000の特徴は、
単に「ぎらつきを測れる装置」ではなく、標準化された考え方に基づいてSparkleを定量評価できること
にあります。
これは、開発段階でのAG材料比較だけでなく、
材料メーカーとディスプレイメーカー間での評価
新旧AG材料の比較
製品仕様変更前後の比較
品質管理
客観的な評価データとしての活用
などにおいて大きな意味を持ちます。
■ AG評価はSparkleだけでは十分ではない
ただし、もう一つ重要なポイントがあります。
それは、
「Sparkle値が小さい=良いAG」ではない
ということです。
AGの本来の目的は、外光の映り込みを低減し、さまざまな環境でディスプレイを見やすくすることです。
そのため実際のAG評価では、Sparkleだけではなく、
Sparkle(ぎらつき)
DOI(MTF評価)
反射特性
拡散・散乱特性
ヘイズ
表示コントラスト
などを組み合わせて評価することが重要です。
例えば、外光の映り込みを抑えるために表面の拡散性を強くすると、反射像は目立ちにくくなる一方で、表示の鮮明感が低下したり、Sparkleが増加したりする可能性があります。
つまりAGには、
「映り込みを抑える性能」と「ディスプレイ本来の表示品質を維持する性能」
との間にトレードオフが存在します。
■ SMS-1000による「複眼的なAG評価」
SMS-1000では、Sparkleだけを見るのではなく、
Sparkle、MTF、AG特性、反射、拡散・散乱など
ディスプレイ表面品質に関連する複数の特性を測定することができます。
例えば、2種類のAG材料を比較した場合、
「Sparkleは改善したが、像鮮明度(MTF)が低下した」
「映り込みは低減したが、表示の見え方が変化した」
といった、単一の評価値だけでは分からない違いを確認することができます。
このように、
一つの数値だけで判断せず、複数の光学特性からAGを評価する“複眼評価”
が、実際のディスプレイ開発では非常に重要だとアフロディは考えています。
■ 「見た目」を標準化された数値へ
ディスプレイ開発の現場では、
「なんとなくザラついて見える」
「この材料の方が映像がきれいに見える」
「映り込みは減ったが、少し表示がぼやけた」
といった感覚的な表現が数多くあります。
こうした人の「見え方」を、標準化された測定方法によって客観的な数値へ置き換えていくこと。
そしてSparkleだけではなく、MTF、反射、拡散など複数の測定結果と組み合わせて原因を考えていくこと。
これがAG・AR材料やディスプレイ表面品質を評価するうえで重要になっています。
アフロディではSMS-1000を使用した測定サービスにも対応しています。
「AG材料を比較したい」
「目視で感じている違いを数値化したい」
「自社サンプルのSparkleを一度測ってみたい」
といった場合には、装置導入前でも実サンプルによる評価が可能です。
■ ディスプレイ測定サービスのご案内
https://marketing.aphrodi.jp/a/1H19213C/113
■ 次回から新シリーズが始まります
9月からは、ディスプレイ評価の現場でよく聞かれる
「目視では違うのに、なぜ測定値は同じなのか?」
「測定器を替えると、なぜ数値が変わるのか?」
「高解像度なのに、なぜぼやけて見えるのか?」
といった、お客様の“困りごと”を起点にした全12回の新シリーズをお届けします。
MTF、ぎらつき、色域、ムラ、視野角など、実際のディスプレイ評価で起こりやすい疑問を一つずつ取り上げ、測定の考え方と解決のヒントをご紹介していきます。
ぜひ次回もご覧ください。
■ お問い合わせはこちら
https://marketing.aphrodi.jp/a/1H19213F6/113
アフロディ株式会社では、ディスプレイ評価に関する豊富な経験と測定ノウハウを活かし、お客様の開発・品質評価業務をサポートしております。
ディスプレイぎらつき/映り込み評価をご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。
今後ともよろしくお願い申し上げます。
