【技術コラム 第8回】社内と取引先で測定値が違うのは、なぜ?
同じディスプレイを測定しているはずなのに、
「自社で測った値と、取引先で測った値が合わない」
という経験はないでしょうか。
例えば、
輝度が数%違う
色度がわずかにずれる
コントラスト値が一致しない
反射率や視野角特性の結果が異なる
といったことです。
このような場合、どちらかの測定器が間違っているとは限りません。
実際には、
校正状態、測定器そのものの器差、測定条件、測定方法
など、複数の要因が重なって測定値の違いが生じていることがあります。
今回は、社内と取引先で測定値が一致しないときに、どこを確認すればよいのかを考えてみます。
■ まず確認したいのは「校正」
測定器は、使用しているうちに少しずつ特性が変化する可能性があります。
そのため、測定値の信頼性を維持するためには、定期的な校正が重要です。
例えば2社が同じディスプレイを測定していたとしても、
一方は最近校正した測定器
もう一方は長期間校正していない測定器
という状態であれば、測定結果に差が生じる可能性があります。
また、校正済みだから必ず同じ値になるというわけでもありません。
どの標準に対して校正されているのか、校正方法や校正時期はどうか、といった点も確認する必要があります。
測定値が合わないときは、まず、両方の測定器が適切な校正状態にあるか
を確認することが基本です。
■ 測定器には「器差」がある
同じ種類の測定器であっても、まったく同じ値が出るとは限りません。
また、異なるメーカーや異なる方式の測定器を使用している場合には、その差がさらに大きくなる可能性があります。
例えば、
センサー方式
分光方式
光学系
測定視野角
分光帯域
波長分解能
受光感度
などが異なれば、同じ対象を測っても結果が完全には一致しないことがあります。
このような測定器固有の違いを、一般に器差と呼びます。
特に近年のディスプレイでは、OLED、量子ドット、MiniLEDなど、従来とは異なる発光スペクトルを持つ製品が増えています。
そのため、測定器の方式や分光特性の違いが、測定結果へ影響する可能性があります。
重要なのは、「どちらの測定器が正しいか」だけではなく、両方の測定器の差を把握することです。
■ 測定条件が少し違うだけでも結果は変わる
測定器が正常で、校正状態にも問題がない。
それでも測定値が合わない場合には、測定条件を確認する必要があります。
例えば、
測定距離
測定角度
測定位置
測定径
測定時間
フォーカス
ディスプレイの表示画像
表示輝度
パネル設定
周囲照明
暗室条件
ウォームアップ時間
などです。
ディスプレイは面内で完全に均一ではありません。
そのため、測定位置が数cm違うだけでも、輝度や色度に差が出ることがあります。
また、ディスプレイの温度や点灯時間によって測定値が変化する場合もあります。
つまり、同じサンプルを測っているだけでは不十分で、同じ条件で測っているか
を確認する必要があります。
■ 「同じ項目を測っているつもり」でも、測定方法が違うことがある
もう一つ重要なのが、測定方法です。
例えば両社とも「輝度」を測定している場合でも、
一方は狭い測定径で画面中央を測定し、
もう一方は広い測定範囲で平均値を求めている、
ということがあります。
この場合、測定項目の名前は同じ「輝度」でも、実際に測っている範囲は異なります。
反射測定、視野角測定、むら測定、ぎらつき測定などでは、測定ジオメトリや解析方法によって結果が変わることもあります。
したがって、「何を測ったか」だけではなく、「どのような方法で測ったか」
まで確認することが重要です。
■ 測定値が合わないとき、すぐに補正してよいのか?
社内と取引先の測定値が異なると、
では、差分を補正値として入れればよいのでは?」
と考えることがあります。
しかし、単純な補正には注意が必要です。
例えばある1台のサンプルで、
自社:500 cd/m²
取引先:510 cd/m²
だったとしても、
すべてのサンプルで常に10 cd/m²の差が出るとは限りません。
輝度レベル、色、スペクトル、測定対象によって器差が変化する場合があります。
そのため、補正を行う場合には、複数のサンプルや測定点を用いて傾向を確認することが重要です。
■ 比較測定が非常に有効
測定値の差を確認する方法として有効なのが、
同じサンプルを複数の測定器で測定する比較測定です。
例えば、
同じディスプレイを用意する
表示条件を統一する
測定位置、距離、角度を揃える
それぞれの測定器で測定する
測定値の差と傾向を比較する
という方法です。
これにより、
校正の問題なのか、器差なのか、測定条件なのかを切り分けやすくなります。
また、一度だけではなく複数回測定することで、測定器自身の再現性も確認できます。
■ 「測定値が違う」こと自体が問題なのではない
実務では、
すべての測定器の値を完全に一致させること
が必ずしも目的ではありません。
重要なのは、
なぜ違うのかを理解し、その差を管理できていることです。
例えば、
「自社装置と取引先装置では平均して約2%の差がある」
「特定の色域では差が大きくなる」
「この測定条件では再現性が±1%以内である」
といったことが分かっていれば、測定値を適切に解釈できます。
逆に、差の理由が分からないまま、
「こちらの数字が正しい」
「そちらの測定がおかしい」
と議論しても、問題の解決にはつながりません。
■ 測定値を合わせるために必要な4つの確認
社内と取引先で測定値が違う場合には、次の順番で確認すると整理しやすくなります。
1.校正状態は適切か
校正時期、校正方法、トレーサビリティを確認します。
2.測定器の器差は把握されているか
同一サンプルによる比較測定を行います。
3.測定条件は同じか
位置、距離、角度、表示条件、環境条件を揃えます。
4.測定方法・解析方法は同じか
測定径、測定ジオメトリ、解析条件などを確認します。
この4つを順番に確認することで、多くの場合、測定値が異なる原因を絞り込むことができます。
■ アフロディから一言
社内と取引先で測定値が違ったとき、
「どちらの測定器が正しいのか?」
だけを考えてしまいがちです。
しかし重要なのは、
「なぜ差が出ているのか?」
を切り分けることです。
測定値の違いには、
校正、器差、測定条件、測定方法
など、複数の要因が関係しています。
そして、測定値を完全に一致させることよりも、
差の原因と大きさを把握し、管理できる状態にすること
が実際の品質管理では重要です。
アフロディでは、各種ディスプレイ測定器の校正・メンテナンスだけでなく、測定器間の比較、測定方法の検討、測定条件の最適化などについてもご相談いただけます。
「自社と取引先で測定値が合わない」
「どちらの測定値を基準にすればよいか分からない」
そのような場合には、測定器だけを見るのではなく、測定プロセス全体から原因を整理することが重要です。
■ 次回予告
次回は、「測定器を替えると数値が変わるのは、なぜ?」
を取り上げます。
測定原理、センサー、分光方式、測定視野など、測定器そのものの違いが結果にどのような影響を与えるのかを考えていきます。
■ ディスプレイ測定サービスのご案内
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アフロディ株式会社では、ディスプレイ評価に関する豊富な経験と測定ノウハウを活かし、お客様の開発・品質評価業務をサポートしております。
ディスプレイの評価のご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。
今後ともよろしくお願い申し上げます。
