技術コラム 第9回測定器を替えると数値が変わるのは、なぜ?
同じディスプレイを測定しているのに、
「測定器Aと測定器Bで値が違う」
という経験はないでしょうか。
例えば、
輝度が少し違う
色度がずれる
低輝度側で差が大きい
特定の色だけ測定値が合わない
といったことがあります。
このような場合、「どちらかの測定器がおかしい」
と考えてしまいがちですが、必ずしもそうとは限りません。
測定器にはそれぞれ、測定原理、センサー、光学系、測定視野、分光特性などの違いがあります。
つまり、同じ“輝度”や“色度”を測っていても、測定器が違えば完全に同じ結果になるとは限らないということです。今回は、なぜ測定器を替えると数値が変わるのかを考えてみます。
■ 「同じ測定項目」でも、中身は同じとは限らない
例えば、2台の測定器がどちらも「輝度」を測定できるとします。
一見すると、同じ物理量を測っているので、同じ値が出るように思えます。
しかし、測定器内部では、
どのようなセンサーを使っているか
どの波長域をどのように捉えているか
どの範囲の光を取り込んでいるか
どの程度の面積を平均しているか
が異なります。
そのため、
測定項目の名前は同じでも、測定器が“見ている光”は完全には同じではない
ことがあります。
■ センサー方式の違い
ディスプレイ測定器には、さまざまな受光方式があります。
例えば、
フィルター方式
分光方式
カメラ方式
などです。
フィルター方式では、光を複数のセンサーで受け、それぞれの感度特性から輝度や色度を求めます。
一方、分光方式では、入射した光を波長ごとに分け、スペクトルを測定したうえで輝度・色度を算出します。
どちらの方式にも特徴があります。
そのため、
測定対象の発光スペクトルによって、測定器間の差が現れやすくなる場合があります。
特に近年は、
OLED
MiniLED
量子ドット
広色域LED
など、従来とは異なるスペクトルを持つディスプレイが増えています。
こうした表示デバイスでは、測定器の分光特性や受光方式の違いが結果に影響することがあります。
■ 分光特性が違えば、色度も変わることがある
人の目は、波長によって感度が異なります。
測定器も、人の視覚特性を模擬したり、分光データから計算したりして、輝度・色度を求めています。
しかし、実際の測定器では、
理想的な視感度特性と完全に一致するわけではありません。
そのため、スペクトル形状が鋭い光源や、特定波長に強いピークを持つディスプレイでは、測定器ごとの差が大きくなる場合があります。
つまり、
白色LEDではほぼ同じ値でも、OLEDや広色域ディスプレイでは差が大きくなる
ということもあり得ます。
■ 測定視野が違えば、平均される範囲も変わる
測定器によって、どの程度の範囲を測っているかも異なります。
例えば、
小さなスポットを測る測定器
比較的広い範囲を平均して測る測定器
カメラで面全体を二次元測定する装置
があります。
ディスプレイは完全に均一ではないため、測定範囲が違えば測定値も変化します。
例えば、中央部にわずかな輝度むらがある場合、
小さなスポット測定ではその差を強く捉えますが、
広い範囲で平均すると差が小さく見えることがあります。
したがって、
測定器を比較するときには、何mm、何度、どの範囲を測っているのか
を見ることが重要です。
■ 光学系やフォーカスの違いも影響する
測定器には、レンズやアパーチャなど、それぞれ固有の光学系があります。
そのため、
測定距離
フォーカス
開口
迷光
視野角
などの違いも測定値に影響します。
特に高解像度ディスプレイや微細なパターンを測定する場合には、
光学系がどこまで細かな構造を捉えられるか
が重要になります。
測定器の分解能が十分でなければ、細かな明暗差が平均化される場合もあります。
■ 低輝度では測定器の特徴が出やすい
黒表示や低輝度階調の測定では、測定器による違いがより目立つことがあります。
低輝度では、
センサーのノイズ
暗電流
測定時間
ダイナミックレンジ
迷光
などの影響が相対的に大きくなるためです。
例えば、高輝度ではほぼ同じ値だった2台の測定器が、
黒輝度や低階調になると大きく異なる
ということがあります。
したがって、測定器を選定するときには、
最高輝度だけではなく、自分が評価したい輝度領域で十分な性能があるか
を見る必要があります。
■ 測定器のスペックだけで選べばよいのか?
ここで大切なのは、
「高精度な測定器=すべての用途に最適」
とは限らないことです。
例えば、
高速に多数点を測定したい
非常に低い黒輝度を測定したい
面内むらを二次元で見たい
スペクトルを詳細に確認したい
車載ディスプレイを角度別に測定したい
生産ラインで短時間に検査したい
など、目的によって必要な性能は異なります。
つまり、測定器を選ぶときには、
「どの測定器が一番高性能か」ではなく、
「何を測りたいのか、その目的に最も適しているのはどの測定器か」
を考えることが重要です。
■ 測定器を変更するときは「相関確認」が重要
既存の測定器から新しい測定器へ変更する場合には、
いきなり新しい測定値へ切り替えるのではなく、
旧測定器と新測定器の相関を確認する
ことをお勧めします。
例えば、
同じディスプレイを用意する
同じ表示条件で測定する
複数の輝度・色条件を設定する
旧測定器と新測定器でそれぞれ測定する
差と傾向を確認する
といった方法です。
このとき、一つの白表示だけではなく、
高輝度
中間輝度
低輝度
RGB各色
黒表示
など、複数条件で確認することが重要です。
そうすることで、
「常に一定の差があるのか」
それとも、
「特定の輝度・色・スペクトルで差が大きくなるのか」
を把握できます。
■ 「どちらが正しいか」より、「なぜ違うか」
測定器AとBの結果が違ったとき、
「どちらが正しい測定器なのか?」
という議論になりがちです。
もちろん、校正状態や測定精度を確認することは重要です。
しかし、それだけではなく、
測定原理や測定条件の違いによって、どのような差が生じているのか
を理解することが大切です。
測定器による差を把握できていれば、
社内基準の継続性
取引先とのデータ比較
新旧測定器の置き換え
製品間の評価
品質判定
にも対応しやすくなります。
■ 測定器選定で確認したいこと
新しい測定器を選ぶ場合には、カタログスペックだけでなく、少なくとも次の点を確認したいところです。
① 何を測りたいのか
輝度・色度なのか、低輝度なのか、面内むらなのか、視野角なのか。
② どのようなディスプレイを測るのか
LCD、OLED、MiniLED、広色域ディスプレイなど、対象によって必要な性能は変わります。
③ 必要な測定精度と再現性はどの程度か
研究開発なのか、品質管理なのか、生産検査なのかによっても異なります。
④ 現在使用している測定器との相関はどうか
既存データとの継続性が必要な場合には特に重要です。
⑤ 実際のサンプルで評価したか
カタログスペックだけでは分からない差があります。
可能であれば、実際のディスプレイを使った比較測定が有効です。
■ アフロディから一言
測定器を替えると数値が変わる。
これは、必ずしも異常なことではありません。
測定器には、
測定原理、センサー、分光特性、光学系、測定視野、低輝度性能
など、それぞれ特徴があります。
重要なのは、
「測定器の数字だけを比較する」のではなく、「なぜその差が出るのか」を理解することです。
そして測定器を選ぶときには、
一番高性能な測定器を選ぶのではなく、評価したい対象・目的に適した測定器を選ぶことが大切です。
アフロディでは、さまざまなディスプレイ測定器を扱ってきた経験をもとに、
「何を測りたいのか」から測定方法・測定器を考える
ことを大切にしています。
「現在の測定器で十分なのか?」
「新しい測定器へ変更した場合、過去のデータとの相関はどうなるのか?」
「自社のディスプレイにはどの方式の測定器が適しているのか?」
そのような疑問がありましたら、実サンプルを使った比較評価も含めてご相談ください。
■ 次回予告
次回は、
「合否基準はどのように決めればよいのか?」
を取り上げます。
測定はできても、
「では、この数値をどこからOK・NGにするのか?」
で悩むケースは少なくありません。
目視評価、測定ばらつき、製品要求、顧客要求などを踏まえた、評価基準の考え方をご紹介します。
■ ディスプレイ測定サービスのご案内
https://marketing.aphrodi.jp/a/1H24210C/115
■ お問い合わせはこちら
https://marketing.aphrodi.jp/a/1H24210F6/115
アフロディ株式会社では、ディスプレイ評価に関する豊富な経験と測定ノウハウを活かし、お客様の開発・品質評価業務をサポートしております。
ディスプレイの評価のご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。
今後ともよろしくお願い申し上げます。
