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技術コラム 第10回合否基準はどのように決めればよいのか

ディスプレイの測定ができるようになると、次に出てくるのが、
「では、どこからOKで、どこからNGにすればよいのか?」
という問題です。

例えば、
「輝度むらは何%までなら合格なのか?」
「色差ΔEはいくつ以下なら問題ないのか?」
「ぎらつきの値は、どこを基準にすればよいのか?」
「MTFは何%以上なら良いディスプレイなのか?」
といった質問です。

しかし、こうした質問に対して、

「この数値以下なら必ず合格です」
と一律に答えることは、実際には簡単ではありません。
なぜなら合否基準は、測定値だけではなく、

製品の用途、顧客要求、目視品質、測定精度、測定ばらつき、製造ばらつき
などを考慮して決める必要があるからです。
今回は、ディスプレイ評価における「合否基準」の考え方について整理してみます。

■「測れること」と「合否を決められること」は違う
測定器を使えば、輝度、色度、コントラスト、MTF、ぎらつき、視野角など、さまざまな特性を数値化できます。

しかし、
数値が出たことと、その数値で合否判定ができることは別の問題です。
例えば、あるディスプレイの輝度むらを測定して、

「8%」
という結果が得られたとします。

では、
8%なら合格なのか。
10%なら不合格なのか。
これは、測定器だけでは決められません。

その製品が、

スマートフォンなのか
車載ディスプレイなのか
医療用モニターなのか
テレビなのか
産業用表示器なのか
によっても、求められる表示品質は異なります。

つまり、
測定値は品質を判断するための情報であり、合否基準そのものではありません。

まず「何のための基準か」を明確にする
合否基準を決めるときに最初に考えたいのは、
その基準を何のために使うのかです。

例えば、

開発段階で複数の試作品を比較したい
量産品の出荷判定をしたい
仕入先から納入される部品を受入検査したい
顧客との品質保証値を決めたい
工程変化を監視したい
では、必要な基準の考え方が異なります。

開発段階であれば、絶対的なOK/NGよりも、
「従来品より改善しているか」
という相対評価が有効なこともあります。

一方、量産品の出荷判定では、
誰が測定しても同じ判定になる明確な数値基準
が必要になります。

したがって、
評価目的を明確にすることが、合否基準設計の第一歩です。

 
目視評価と測定値を結びつける
ディスプレイは最終的には「人が見る製品」です。
そのため、表示品質に関する合否基準を決める際には、
目視で感じる品質と測定値との関係
を確認することが非常に重要です。

例えば、むら評価であれば、

複数のサンプルを用意し、

「問題なし」
「少し気になる」
「明らかにNG」

といった目視評価を行います。

そのうえで、それぞれのサンプルを測定し、
目視評価が変化する境界付近で、測定値がどのようになっているか
を確認します。

こうすることで、

単に測定器の数字から基準を決めるのではなく、
実際の見え方に対応した基準を作ることができます。

これは、むら、ぎらつき、鮮鋭度、反射など、人の見え方と強く関係する評価では特に重要です。

 
「限度見本」を活用する方法もある
数値基準だけでは判断しにくい品質については、

限度見本(Golden Sample/Limit Sample)
を用いる方法もあります。

例えば、

「このサンプルまでは合格」
「これより悪いものは不合格」
という境界サンプルを決めます。

そのサンプルについて目視評価と機器測定の両方を行い、

限度見本の測定値を基準設計の一つの材料にする
という考え方です。

特に、むら、ぎらつき、表面品質などでは、数値だけでは人が感じる品質を完全に表現できない場合があります。

そのため、

目視基準+測定値
という組み合わせが有効なケースもあります。

 
測定ばらつきを無視してはいけない
合否基準を設定するときに非常に重要なのが、
測定そのものにもばらつきがある
ということです。
例えば、同じサンプルを繰り返し測定して、

9.8
10.0
10.2

という結果が得られたとします。

ここで合否基準を「10.0以下」と決めると、

同じ製品なのに、

あるときは合格し、あるときは不合格になる可能性があります。
このような状態では、安定した品質判定はできません。
したがって、基準値を設定する前に、

測定の繰り返し性・再現性がどの程度あるのか

を確認する必要があります。

これは前回まで取り上げてきた、

測定器の精度
校正
器差
測定条件
とも密接に関係します。

 
製品そのものにもばらつきがある
測定器だけではなく、製品にも当然ばらつきがあります。

例えば同じ型式のディスプレイでも、

パネル間の差
ロット間の差
温度による変化
経時変化
製造工程の変動
などがあります。

そのため、基準値を設定するときに、
1台の良品だけを測って決めるのは危険です。

できれば複数の良品・限界品・不良品を測定し、
実際の製造ばらつきがどの程度存在するのか
を把握したうえで基準を決める必要があります。


基準値ギリギリを量産中心値にしない
例えば、

顧客要求が「100以上」
だったとします。

それなら製造目標を、
「100が出ればよい」

としてよいでしょうか。

実際には、測定ばらつきや製造ばらつきがあるため、それでは安定した品質保証が難しくなります。

顧客要求値と実際の工程管理値との間には、
ある程度の余裕(マージン)
を持たせる必要があります。

つまり、

顧客との合否基準と社内で管理する目標値
は、必ずしも同じである必要はありません。

顧客要求を確実に満たすために、社内ではより厳しい管理値を設定する考え方があります。

 
合否基準の前に、測定方法を固定する
ここで非常に重要なのが、

基準値だけ決めても、測定方法が決まっていなければ意味がないということです。

例えば「輝度500 cd/m²以上」という基準があっても、

どの位置を測るのか
どの測定器を使用するのか
測定距離はいくつか
表示画像は何か
点灯後何分で測るのか
周囲環境はどうするか
が異なれば、結果も変わります。

したがって品質基準を作るときには、

「基準値」と「測定方法」をセットで定義することが重要です。

これは取引先との測定値の不一致を防ぐ意味でも非常に大切です。

 
公的規格や顧客規格がある場合は、まずそこを確認する
評価項目によっては、JIS、IEC、ISOなどの規格や、業界規格、顧客独自規格で測定方法や要求事項が定められている場合があります。

その場合には、まず、

どの規格・仕様書を基準にするのかを明確にします。
ただし、公的規格に測定方法が定められていても、
自社製品の合否値そのものまで規定されているとは限りません。

「どう測るか」と、

「どこから合格にするか」は、

分けて考える必要があります。

 
合否基準は一度決めたら終わりではない
製品開発が進むと、

ディスプレイの高精細化
新しい発光方式
新しい表面処理
使用環境の変化
顧客要求の変化
などによって、従来の評価基準では品質を十分に表せなくなる場合があります。

例えば、解像度が大幅に向上したディスプレイに対して、従来と同じ評価項目だけで十分なのか。

車載ディスプレイで正面特性だけを見ていてよいのか。
OLEDの黒品質を従来のLCDと同じ考え方で評価できるのか。
こうした変化に応じて、
測定項目や合否基準そのものを見直すことも必要です。

 
合否基準を作る基本的な流れ
アフロディでは、合否基準を考える際には、次のような流れで整理することが重要だと考えています。

1.何を品質として管理したいのか

まず顧客の要求や目視上の問題を明確にします。

2.どの物理量で、その品質を評価できるのか

輝度、色度、MTF、ぎらつき、反射、むらなど、適切な測定項目を選択します。

3.測定方法・条件を固定する

装置、位置、距離、角度、表示条件などを明確にします。

4.測定のばらつきを把握する

繰り返し性、再現性、器差などを確認します。

5.良品・限界品・不良品を実際に測定する

目視評価と測定値との関係を確認します。

6.顧客要求と製造ばらつきを考慮して基準を設定する

必要に応じて社内管理値にはマージンを設定します。
この流れで考えることで、
「何となく決めた数値」ではなく、根拠のある品質基準
に近づけることができます。

 
アフロディから一言
「合否基準はいくつにすればよいですか?」

私たちも、お客様からこのようなご相談を受けることがあります。
しかし、測定器のカタログや一つの測定値だけから、

「この数字なら合格」
と決めることはできません。

重要なのは、
何を品質として守りたいのか。
人は何を見て良い・悪いと感じているのか。
それを、どの物理量で測ればよいのか。
そして、その測定をどの程度の精度で行えるのか。
を順番に考えることです。

つまり、合否基準を決めることは、

単なる「数値決め」ではなく、「評価方法を設計すること」
だと考えています。

アフロディでは、測定器の販売だけではなく、実サンプルを用いた測定、測定方法の検討、目視評価との相関確認などを通じて、
お客様の製品に適した評価方法づくりをご提案しています。

「測定はできるが、どこを合否基準にすればよいか分からない」
「取引先と品質基準を決めたい」
そのような課題がありましたら、お気軽にご相談ください。

 
次回予告
次回は、

「高解像度なのに、なぜぼやけて見えるのか?」

を取り上げます。
解像度の数字が高くても、実際の文字や画像が必ずしも鮮明に見えるとは限りません。
画素数だけでは説明できない“見た目の鮮鋭度”とMTFの関係についてご紹介します。


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アフロディ株式会社では、ディスプレイ評価に関する豊富な経験と測定ノウハウを活かし、お客様の開発・品質評価業務をサポートしております。
ディスプレイの評価のご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。