第12回 技術コラム 黒画面のムラは、なぜ数値化が難しいのか?
「黒画面にすると、うっすら明るい部分が見える」
「目ではムラが分かるのに、測定値では大きな差が出ない」
「どこまでを良品とするのか、判断基準が難しい」
ディスプレイ評価の中でも、黒画面のムラ評価(Black Mura)は、特に難しいテーマの一つです。
今回は、なぜ黒画面のムラは数値化が難しいのか、そしてどのように評価すればよいのかをご紹介します。
■ 黒画面では、わずかな差が目立ちやすい
明るい画面では、多少の輝度差があっても目立ちにくいことがあります。
一方、黒画面では全体の輝度が低いため、わずかな光漏れや輝度差でも、人の目にはムラとして感じられることがあります。
特に暗い環境では、
・部分的に明るく見える
・雲のようなムラが見える
・端部だけ明るく見える
・局所的な光漏れが気になる
といった現象が目立ちやすくなります。
つまり黒画面の評価では、絶対的な輝度値が小さい中での微小な差を扱う必要があります。
■ 最大値と最小値だけでは不十分
ムラ評価というと、
「最大輝度と最小輝度を比較すればよいのでは?」
と思われることがあります。
しかし、実際の見え方はそれほど単純ではありません。
例えば、最大値と最小値が同じであっても、
・ムラが広い範囲に分布している
・小さな明るい部分が局所的に存在する
・中心部だけ明るい
・端部に沿って明るくなっている
など、ムラの形や位置、広がり方によって見え方は異なります。
つまり、黒画面のムラは単純な一点の輝度値ではなく、画面全体の空間的な分布として評価することが重要です。
■ 人の目は「差」だけでなく「変化」も見ている
人間の視覚は、単純な明るさだけではなく、
・周囲とのコントラスト
・ムラの大きさ
・ムラの形
・明るさの変化の仕方
・発生位置
などにも影響を受けます。
そのため、測定値上では小さな差でも、目視では気になるということがあります。
反対に、輝度差があっても、その変化が非常になだらかであれば目立ちにくい場合もあります。
この「測定値」と「見た目」の関係が、黒画面ムラ評価を難しくしている理由の一つです。
■ Black Muraには標準化された評価方法があります
こうした黒ムラを客観的に評価するため、ドイツのDFF(Deutsches Flachdisplay Forum)では、
「Uniformity Measurement Standard for Displays (Black Mura)」
という測定方法がまとめられています。
このDFF方式では、イメージング輝度測定器を使用してディスプレイ全面の輝度分布を測定し、単純な最大輝度・最小輝度だけではなく、画面内で輝度がどのように変化しているかを解析します。
Black Muraの検出では、黒画像の輝度勾配(Luminance Gradient)、つまり「場所によって明るさがどの程度変化しているか」に着目します。
これによって、「どれだけ明るいか」だけではなく、「周囲に対してどのように明るさが変化しているか」
という、実際のムラの見え方に関係する情報を評価することができます。
■ なぜ「輝度勾配」を見るのか?
例えば、同じ0.1cd/m²の輝度差があったとしても、
広い範囲でゆっくり変化している場合と、狭い範囲で急激に変化している場合では、目に感じるムラの印象は異なります。
そこでDFFのBlack Mura評価では、画面上の輝度変化を画像処理し、X方向・Y方向の輝度勾配から、局所的な明るさの変化を評価します。
さらに、人間の視覚が周囲の明るさに対する相対的な変化を感じるという考え方を踏まえ、輝度勾配を平均輝度で正規化する考え方も採用されています。DFF文書では、夜間は他の反射光が少ないためMuraが特に問題になりやすいことにも触れています。
つまりBlack Mura評価では、
「黒が何cd/m²か」だけではなく、「その黒が画面内でどのように変化しているか」
を見ることが重要なのです。
■ 面で測ることが重要
このような評価を行うためには、スポット型測定器で数点だけを測定する方法では十分でない場合があります。
そこで有効なのが、イメージング測定器による面測定です。
画面全体を一度に測定することで、
・どこにムラがあるか
・どの程度広がっているか
・周囲との輝度差がどれくらいあるか
・どこで輝度が急激に変化しているか
を画像として把握できます。
DFF方式でも、輝度カメラによる面測定を前提として、小〜中型の高品質ディスプレイについて、平均輝度、輝度均一性、Black Muraを評価する方法が規定されています。
■ 測定条件をそろえることも重要
Black Muraは低輝度を扱うため、測定装置だけでなく、測定条件も非常に重要です。
例えば、
・ディスプレイとカメラの位置合わせ
・測定距離
・フォーカス条件
・露光時間
・PWMなど時間的変動の影響
・測定器の安定性
などです。
DFF標準でも、再現性のある測定のため、温度やウォームアップ時間などの安定した測定条件を求めています。
つまり、Black Mura評価では、評価アルゴリズムだけでなく、「どのように測るか」まで統一することが重要になります。
■ 車載ディスプレイでは特に重要
近年、車載ディスプレイは大型化・高精細化が進んでいます。
夜間の車内ではディスプレイ周辺が暗くなるため、黒画面のわずかなムラや光漏れが目立ちやすくなります。
また、
・メーターディスプレイ
・センターディスプレイ
・助手席ディスプレイ
・大型一体型ディスプレイ
など、表示面積が大きくなるほど、黒表示時の均一性管理も重要になります。
DFFのBlack Mura標準も、Display Measurement Specification(DMS)for Automotive-TFT LCDsに関連する文書として位置付けられています。
そのため車載ディスプレイでは、単純な輝度測定だけでなく、Black Muraを含めた面品質の定量管理が重要になります。
■ 「目視で気になる」を数値にする
黒画面のムラ評価で重要なのは、
測定値を出すことそのものではなく、目視で感じる違いを再現性のある数値として表現することです。
そのためには、
・測定条件を統一する
・画面全体を面として測定する
・輝度分布だけでなく輝度勾配を評価する
・目視評価との相関を確認する
・最終的な管理基準を設定する
という流れが重要になります。
アフロディでは、LMK-6(Technoteam社)などのイメージング測定器を活用し、DFF Black Mura評価を含めた面評価について、測定から解析、評価条件・管理基準の検討までサポートしています。
「黒画面のムラが気になるが、どう数値化すればよいか分からない」
そのような場合は、単純な最大値・最小値だけではなく、
画面全体の輝度分布と“輝度の変化”を測る
という視点から評価方法を考えることが重要です。
次回予告
次回は、「OLEDとMiniLEDは、何を比べればよいのか?」をご紹介します。
黒の表現、輝度、ハロー、色、視野角、応答特性など、表示方式が異なるディスプレイをどのような指標で比較すればよいのか。
単純なスペック比較では見えない「実際の画質」の評価ポイントを解説します。
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